MAP 閉じる

検 索 閉じる

番組検索

番組キーワードから探す

番組名から探す

KBCマップ

エリア

辛いものマップ

ANNOUNCER

KBCアナウンサーブログ富田 薫

“先入観の怖さ”を思い知らされた! 映画『リチャード・ジュエル』

2020年01月19日

富田 薫

この映画の詳しい情報はこちらまで→http://wwws.warnerbros.co.jp/richard-jewelljp/index.html

 昨年(2019年)の国内映画興行収入(興収)の総額は、過去最高の2550億円に達するという。『天気の子』を筆頭に『アラジン』『トイ・ストーリー4』と9年ぶりに3作が100億円を超え、例年であれば閑散期といわれる6月に『アラジン』、10月にも『ジョーカー』が公開され、年間を通して途切れることなくヒット作が続いた年だった。

 この「興収」は、作品を評価する指標のひとつだが、一方で「経済的な数字に関係なく世に送り出すべき作品」もあるはずだ。本作『リチャード・ジュエル』は、その代表格と言っていいだろう。

 1996年、アメリカのオリンピック開催都市・アトランタでの「爆破テロ事件」にからんで実際に起こった「冤罪事件」が描かれる。その「被害者」になったのが、タイトルになったリチャード・ジュエルなる人物。彼はオリンピック開催中に屋外の音楽イベント会場で警備を担当していたが、ベンチの下に仕掛けられた爆発物を偶然発見する。

 周囲に避難を呼びかけるなど尽力し、結果的に被害の拡大を防いで英雄視されるが、第一発見者だったがゆえにFBIからは疑いの目で見られてしまい、事態は思いがけない方向に転がっていく…。

「事件」が起きた実際の場所で行われたロケからは、当時の緊迫感が伝わってくる。リチャード・ジュエルご本人は2007年に44歳で亡くなっていて、改めての名誉回復となった。

 さすがは「巨匠」と呼ばれるクリント・イーストウッド監督である。「リチャード・ジュエル(善)vsFBI&メディア(悪)」というありがちな構図では描かない。登場人物の「ひと癖もふた癖もある人間像」を浮かび上がらせ、ブラック・ユーモアのスパイスを効かせながらストーリーを進行させる。人権問題がからむシビアな内容にもかかわらず、思わずうなずいてしまうドラマに仕上がっているのだ。

 たとえば、サム・ロックウェルが演じるブライアントは、とても弁護士には見えないカーゴパンツに帽子というファッションでFBIを手玉に取る。特ダネは絶対に逃さない野心家の地元紙記者を演じるオリヴィア・ワイルドは「そんな取材方法がホントにあるの?」というぶっ飛んだ人物に描かれる一方、ジョン・ハムが演じるFBI取調官は、複数のキャラが混ざった架空の人物だったりする。

 主人公のジュエル役は『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』にも出ていたポール・ウォルター・ハウザーだが、そのキャラは「?・?・?(詳しくは書けません。作品のキモなので…)」の連続で、確かに疑われる要素を内包している。彼の母親を「ミザリー」のキャシー・ベイツが直球勝負で演じ、やっぱり「第92回アカデミー賞・助演女優賞」にノミネートされた(表彰式は日本時間2月10日)。

FBIやマスコミに「母親」として呼びかけるキャシー・ベイツの演技はさすが。

 それぞれのシーンに説得力があると思ったら、いかにも弁護士事務所という室内は96年に実際に使われていた部屋だったし、セットに見えた屋外の音楽イベント会場も爆破テロ事件の現場となった記念公園の撮影許可を取り、アトランタ・オリンピックとほぼ同じ時期にロケをするこだわりようだった。

 この作品のテーマは、ズバリ「冤罪・報道被害」。1994(平成6)年の「松本サリン事件」における苦い経験を思い出さざるを得なかった。最近でも「面白く&可笑しく」という表現が先行するマスコミ・週刊誌報道が全くないわけではない。クリント・イーストウッド監督が描きたかった「すべてにおいて“先入観”を持つことは危険」ということを肝に銘じたエンディングだった。

 ※1月17日(金)から全国ロードショー
 (c) 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

弁護士役のサム・ロックウェル(左)とジュエル役のポール・ウォルター・ハウザーとのコンビは絶妙で「バディもの」にも見えてきて…。
裁判が終わるまでは「推定無罪」が原則なのに、FBIから「この電話で“公園に爆弾がある。爆発まで30分”と言え!」などと強制されて…。