MAP 閉じる

検 索 閉じる

番組検索

番組キーワードから探す

番組名から探す

KBCマップ

エリア

辛いものマップ

ANNOUNCER

KBCアナウンサーブログ富田 薫

オーストリアの自然と戦争とのギャップが印象深い… 映画『名もなき生涯』

2020年02月17日

富田 薫

(c) 2019 Twentieth Century Fox

 2019年の日本の映画興行収入は2611億8千万円(前年比386億9千万円増)で、現在の発表形式に変わった00年以降で過去最高となった。

 邦画と洋画を合わせた興収のトップは新海誠監督の新作アニメ「天気の子」で140億6千万円、洋画の1位はディズニーアニメの続編「アナと雪の女王2」で、127億9千万円に達して現在も上昇中だ(いずれも日本映画製作者連盟の調査)。

 このデータを紹介した理由は、そんな興行収入上位のアニメファンである若い世代にこそ見てほしい作品だからだ。

1939年のオーストリア。主人公の農夫フランツ・イェーガーシュテッター(アウグスト・ディール)とファニ(ヴァレリー・パフナー)は幸せな生活をおくっていたが…。

 主人公のフランツ・イェーガーシュテッターは、第二次世界大戦時のオーストリア(当時はドイツに併合)に実在した農夫で、ヒトラーへの忠誠と兵役を拒み「ナチスには加担しない」という信念を貫いた人物である。

 その逸話は、彼が住んでいた人口500人ほどのザンクト・ラーデグントという農村以外ではほとんど知られておらず、1970年代にアメリカ人のゴードン・ザーン氏が発掘するまでは「名もなき農夫のお話」にすぎなかった。

 彼と暮らす妻のファニと3人の娘、義理の母や姉といった家族の生きざまが淡々と描かれるが、ナチスドイツに立ち向かう戦いはまさに「孤軍奮闘」。

 人間の命と尊厳を守るはずの教会関係者に教えを乞うても「長いものにはまかれろ」という反応。同じ農村の住民からも「裏切り者!」と罵声をあび、ナチスドイツが闊歩していた時代の恐ろしさが浮かび上がる。

雄大な自然の中での農村生活が描かれるが、徐々に戦争の不穏な空気が漂い始め…。

 特に前半の「不自然なカット割り」は、不穏な時代背景を強調するかのような演出だ。しかし、いたずらに緊張感をあおるばかりではない。

 オーストリアやイタリア・南チロルなどでロケが行われた映像には「アルプスの少女ハイジ」を思わせるような山麓に、白い雲や清らかな水の流れが登場する。そこでは一切のセリフを排除した環境ビデオのような風情が続き、その「微妙な間」によって当事者の心情を深く考えさせられることになる。

 さすがは「ベルリン国際映画祭金熊賞(シン・レッド・ライン/1998)」「カンヌ映画祭パルム・ドール(ツリー・オブ・ライフ/2011)」などを受賞したテレンス・マリック監督(脚本も)ならではの演出が光る。

家族の絆が淡々と描かれれば描かれるほど、胸騒ぎは増していき…。

 大きな潮流に逆らって自分の信念を貫くことの難しさ、人間の非力さを痛感させられるエンディングだが、それは当時のナチスドイツに対してだけではなく、現代社会にもある話で…などという紹介文を読んだ若いアニメファンのあなたは「高尚な作品だから、ターゲットは若者じゃないんでしょ?」と感じるだろう。

 しかし、最後の最後に登場する19世紀のイギリスの作家・ジョージ・エリオットの「ある名言」によってこの作品のテーマが明らかになる。それは「歴史上は名もなき人間であっても『天気の子』や『アナ雪』を自由に謳歌できる世の中に貢献していることがあるのでは…」ということだった。

 ※2月21日(金)から、福岡中洲大洋で全国ロードショー
 ※この映画の詳しい情報はこちらまで→http://www.foxmovies-jp.com/namonaki-shogai/

「二次大戦中のこんな逸話が埋もれていたのか!」と驚くことばかりで…。