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KBCアナウンサーブログ富田 薫

第93回アカデミー賞主要6部門ノミネート作品登場!! 映画『ノマドランド』

2021年03月15日

富田 薫

この作品のさらに詳しい情報はこちらまで→https://searchlightpictures.jp/movie/nomadland.html

© 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 今から50年ほど前の1970年代中盤、私は東京に住む高校生で、映画を見に行くのは、もっぱら渋谷の“全線座(ぜんせんざ)”。ここは、ロードショー公開された新作を二番目に上映する“二番館”で、二本立てにもかかわらず入場料が安く、当時400円だった。

 公開ラインナップはうる覚えだが、たとえば『M★A★S★H(マッシュ)とキャッチ22』とか『フレンチ・コネクションとダーティハリー』『明日に向って撃て!とさすらいのカウボーイ』。そして“パニック映画特集”だったのだろう『タワーリング・インフェルノとポセイドンアドベンチャー(1973年公開の方ね)』と映画ファンにとってはコスパが良すぎる組み合わせ。

 そのスクリーンから伝わる“ワクワク感”が、こうやって趣味の映画について書くきっかけになったわけだ。

 なぜ、この話を書いたかと言えば、自分がそんな70年代に遭遇した「アメリカン・ニューシネマ」の流れをくむのが本作『ノマドランド』だからだ。

 当時のアメリカでは、1965年にはじまったベトナム戦争に疑問を投げかけると同時に「アメリカはこのままでいいのか?」と問いかける複数の作品が登場し、日本では「アメリカン・ニューシネマ(英語圏ではNew Hollywoodなど)」と呼ばれた。

 代表作は『イージーライダー(1970年)』と『タクシードライバー(1976年)』で、本作はそれらとの共通点が数多い。

 なので「ベネチア国際映画祭:金獅子賞」と「トロント国際映画祭:観客賞」を映画史上初めてダブル受賞したのも納得だし、本年度アカデミー賞のノミネーション発表でも作品賞、監督賞(クロエ・ジャオ)、主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)、脚色賞(クロエ・ジャオ)、撮影賞(ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ)、編集賞(クロエ・ジャオ)の主要6部門でノミネートといった高い評価も当然だろう。

主演のフランシス・マクドーマンドは『ファーゴ(1996年)』と『スリー・ビルボード(2018年)』でアカデミー賞主演女優賞を獲得。

 原作は、ジャーナリストのジェシカ・ブルーダーによるノンフィクション「ノマド: 漂流する高齢労働者たち(春秋社刊)」。「ノマド」は直訳すると「遊牧民」だが、ネバタ州で様々な理由から家を手放し、車上で生活を営む「現代のノマド」が描かれる。実際に数百人の車上生活者を取材していて、プロの俳優に交じって、実在の「現代のノマド」も登場する。

 アカデミー賞(しかも2回)女優のフランシス・マクドーマンドが演じる主人公・ファーンの自宅は、キャンピングカーといえば聞こえがいいが、見た目は明らかに「ヴァン」なのだ。セリフにも「この車の名前はヴァンガード(先駆者)なのよ」というダジャレが登場する。

 生活する中で数々の人々と出会うが、彼らは例外なく何らかの“荷物”を抱えている。親との断絶、病気で余命いくばくもない人、家族のもとへ戻るのを躊躇する人…。

 その話の聞き役は彼女だが、スクリーンから「もしあなただったら彼らに何と答えますか?」と私たちにも問いかけてくる。こちらは「急にそんなこと言われても…」とたじろぐが、どうやら監督は深く考えさせたい様子で、その時間を与えるかのように「遠くまで広がる砂漠」「なんでもない石」「去っていく車」「サボテン」といった映像による独特の「間」が出現する。

 そして、主人公・ファーン自身も裕福に暮らす姉とは“価値観が違う”ことがわかってくると、いよいよこの映画の本領発揮だ。
「本当の幸福とは何か?」
「人間が生きる上で大切なことは?」
「このままで持続可能な社会を築けるの?」
 …別の意味で“戦争状態”のアメリカに数々の疑問を投げかけるが、それらは多かれ少なかれ、日本に住む私たちにも共通する課題なのだ。

 エンディングも深く考えさせられる風景で幕を閉じる。そこにも70年代の「アメリカン・ニューシネマ」に通じるものがあるが、当時のピーター・フォンダやロバート・デ・ニーロの“凄惨さ”はない。

 そして、この作品には大きな“おまけ”がついてくる。ロデオをテーマにした前作『ザ・ライダー』で43の映画賞にノミネートされ、そのうち24部門を受賞した本作のクロエ・ジャオ監督が、マーベル・スタジオの最新作『エターナルズ(Eternals)』の監督に抜擢されたという。ジャンルとしては180度以上の大転換になるヒーロー超大作だが、そのニュースには“渋谷全線座”の座席に座った時以上にワクワクするのだった。

 ※3月26日(金)から、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、T・ジョイ博多、中州大洋 他で全国公開(配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン)

 ※マーベル・スタジオの最新作『エターナルズ(Eternals)』は、今年(2021年)日本公開予定