血栓症
2020年07月04日
[過去の放送内容]
今回、血栓症についてお話を伺ったのは、済生会福岡総合病院 循環器内科 部長の野副 純世(のぞえ まさつぐ)先生です。
■血栓症とは
血栓症とは、血液中に血の塊“血栓”ができるもので、それが血管内で詰まることでさまざまな疾患の発症につながります。
血栓症は冬と夏に多いといわれています。
冬の血栓症は、寒さによって血管が収縮することで血管が詰まりやすくなることが原因です。
夏の血栓症は、体の中の水分が減って、血液がドロドロになりやすくなるのが原因です。
■血栓ができる原因
高脂血症や糖尿病といった生活習慣病になると血液がドロドロになりやすくなります。
また、動脈硬化が進むと血管自体が痛むことによって血栓ができやすくなります。
■血栓症による疾患
血栓症による主な疾患は、心臓や脳の血管内が詰まる心筋梗塞、脳梗塞。
足の静脈にできた血栓が血流に乗って移動し、肺の血管を詰まらせる“エコノミークラス症候群”です。
■心筋梗塞
心臓の周りには、心臓を栄養する大きな血管が走っています。
その血管が詰まると心臓に栄養が行かなくなって心臓の筋肉が壊死してしまいます。これを心筋梗塞と呼んでいます。
発症すると、10人に1人くらいの割合で死に至るとされ、とても危険な病気です。
■脳梗塞と心房細動
脳梗塞が起こる要因にはいくつか種類がありますが、不整脈のひとつである心房細動による脳梗塞は重症化しやすいとされています。
心房細動が続くと心臓内の左心房の中で血液がよどみ、血栓ができやすくなります。
この血栓が心臓から離れて、血流に乗って脳へと進むことで脳梗塞が起こります。
■心房細動の治療
治療では、抗凝固薬(※血液をサラサラにする薬)を飲んで血栓を予防しますが、
患者さんの中には服用によって、何らかのきっかけで出血した際に血が止まらなくなる人がいるので、
そういった人には、新しい血管内治療が使用可能となってきています。
足の付け根の血管からカテーテルという細い管を入れ、心臓内の血栓が溜まりやすい左心耳(さしんじ)というところにまで到達させます。
そこで、先端に取り付けられた網のような機器を展開。左心耳にふたをするような形になり、血栓が外へ飛んでいくことはありません。
■エコノミークラス症候群
足の静脈に血栓ができるのがエコノミークラス症候群で、発症すると命に関わることも少なくありません。
飛行機などに長時間乗っていると足の血流が停滞することで血栓ができやすくなります。
その血栓が肺の方に飛んで、大きい血管で詰まることで急激に血圧が低下したり、酸素の取り込みがうまくいかなくなったりすることがあります。
■エコノミークラス症候群の予防
エコノミークラス症候群の予防は長い時間、同じ姿勢でいないことです。
デスクワークを1時間続けたら手を止めて、足先やかかと、ふくらはぎを動かして足の血流を促しましょう。
とくにテレワーク中は仕事とプライベートのメリハリをつけにくいことから、
ダラダラと仕事をしてしまいがちなので気をつけましょう。
■先生よりまとめ
最近では、豪雨や洪水といった大きな災害も多くなってきています。
みなさんも避難所生活を送らないといけない場合が出てくるかもしれないので、
そういった場合にはエコノミークラス症候群に気をつけながら生活を送るようにしてください。