【日中首脳が初会談】戦略的互恵は再確認も“歴史認識では…応酬”中国の対日警戒は
政治|
11/02 22:49
10月21日に召集された臨時国会で、内閣総理大臣に選出された高市早苗氏が、就任からわずか数日で国際舞台に立った。24日の所信表明演説を経て、25日から東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議出席のためマレーシアを訪問。就任後初の外遊となる「外交デビュー」では、立て続けに各国首脳と会談し、矢継ぎ早に国際関係の構築を進めた。25日、高市氏はマレーシア滞在中に、大統領専用機で移動中のトランプ米大統領と初の日米首脳電話会談を行い、約10分間にわたり、インド太平洋の安全保障や経済連携について意見を交わした。翌26日には、フィリピンのマルコス大統領、マレーシアのアンワル首相、オーストラリアのアルバニージー首相と相次いで会談した。28日には、東京で日米首脳会談を開催し、同日インドのモディ首相とも電話で会談。30日からは韓国・慶州でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に臨んだ。31日には同会議の合間を縫い、日中首脳会談を実施。就任10日余で、米国・中国・韓国をはじめ、ASEAN主要国と接触する異例の外交日程をこなした。 高市氏と各国首脳との握手にも、微妙なニュアンスが表れた。10月28日の日米首脳会談で高市氏は、トランプ氏と18秒間の握手を交わし、笑顔で見つめ合う場面が報道陣に公開された。30日の日韓首脳会談では、李在明大統領と約15秒間、やや緊張感を帯びた握手を交わした。31日の日中首脳会談では、習近平国家主席と固い表情で、10秒間の握手を交わした。APECの首脳会議では、高市氏は、隣席となったインドネシアのプラボウォ大統領に自ら声をかけ、モニター画面を見ながら笑顔で歓談する姿がカメラに捉えられた。控室でもニュージーランドのラクソン首相、フィリピンのマルコス大統領らと打ち解けた様子で談笑するなど、初の国際舞台ながら堂々たる振る舞いを際立たせた。高市氏は記者団に対し、「ASEANでご一緒した首脳も多く、『この間ありがとうね』と声を掛け合った。就任後、まだ直接お話していない国々の首脳とは、すべてご挨拶できた」と語り、短期間での信頼関係構築に自信をのぞかせた。 10月21日、高市早苗氏の総理誕生を受け、世界各国が祝意を表する中、習近平氏は祝電を送らず、沈黙を保った。これまで菅義偉氏、岸田文雄氏、石破茂氏ら歴代政権誕生時には、いずれも就任当日に習近平国家主席から祝電が寄せられていたが、今回はそれが見送られた。高市氏の総理就任から2日後の23日、中国外務省の郭嘉昆副報道局長は会見で、「日本が本当に専守防衛と平和的発展を堅持しているのか、強い疑問を抱かざるを得ない」と述べ、高市政権の安全保障政策に警戒感を示した。24日の所信表明演説で高市氏は、「中国は日本にとって重要な隣国であり、建設的かつ安定的な関係を構築していく必要がある」と述べる一方で、「経済安全保障を含む安全保障上の懸念が存在することも事実」と語り、対中姿勢では対話と抑止の両立を強調した。これに対して、郭副報道局長は同日、再び「日本が平和的発展を進めているのか強い疑念を抱かざるを得ない」と発言。中国側の不信感が根強いことを印象づけた。また、26日、マレーシアで開かれたASEAN首脳会議において、高市氏は演説の中で、「東・南シナ海において挑発的な軍事活動が継続・強化されており、深刻な懸念を表明する」と述べ、中国の動きを念頭に牽制した。28日、東京で日米首脳会談が行われたが、中国外務省の郭副報道局長は、「日米の二国間関係と安全保障協力は地域の平和と安定に役立つものであるべきでその逆であってはならない」と警戒感を表明。郭副報道局長は29日、31日開催の日中首脳会談を目前に、「高市氏が日中関係を非常に重視し、中国とデカップリング(経済切り離し)する気はないと日本側が表明した」と語った。 10月31日、韓国で開催されたAPEC首脳会議で、高市総理と中国の習近平国家主席による日中首脳会談が実現した。両首脳の対面会談は高市政権発足後、初めて。約30分間にわたり、東シナ海や経済安全保障を含む幅広い課題について率直な意見交換が行われた。会談冒頭、習主席は「中国は日本の重要な隣国であり、建設的で安定的な関係を築くべきだ」と述べたうえで、「両国の戦略的互恵関係を全面的に推進することは、新しい内閣が中日関係に抱く認識を反映している」と語った。これに対し、高市総理は「中国は日本にとって重要な隣国であり、戦略的互恵関係の包括的な推進と、建設的かつ安定的な関係の構築という日中関係の大きな方向性を改めて確認したい」と応じ、双方が関係安定の必要性を共有する姿勢を示した。会談では、尖閣諸島を含む東シナ海情勢や、レアアースなど戦略物資の輸出管理、邦人拘束問題など、両国間の懸案が取り上げられた。習主席は、「歴史や台湾といった重大な問題で、4つの政治文書が定めた明確なルールを守り、中日関係の基礎を揺るがせないようにすべきだ」と強調。さらに、「村山談話は日本の侵略の歴史を反省し、被害国に謝罪したもので広めるに値する」と言及し、歴史認識問題で釘を刺した。会談後、高市総理は記者団に対し、「かなり中身の濃い、充実した議論ができた。まず確認したのは、日中間の戦略的互恵関係、そして建設的かつ安定的な関係を構築していくという大方針」と述べ、実務的かつ対話重視の外交姿勢を強調した。 ★ゲスト: ジョセフ・クラフト(経済・政治アナリスト)、柯隆(東京財団主席研究員)、鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授) ★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)





