“街クマ”対応のプロ 岩手の“吹き矢園長”語る極意 新人養成へ「練習が本番」
社会|
12/07 23:30
12月に入っても、まだクマは眠っていません。県内でただ1人、“麻酔吹き矢”で“街クマ”の対応をしているベテラン、動物公園の園長を取材しました。 ■クマ爆走付近で捕獲後も出没 「あ、来ました、来ました、これですね」 「これこれこれ」 これはきのう6日、秋田市内の防犯カメラが捉えた映像。画面の左上、クマが猛スピードで走り、川へ降りていく様子が映っています。そして、クマは川を渡り、向こう岸の住宅地の方に去っていきました。 Q.クマは見た? (目撃した人)「見ました。ばっちりクマいるのを、走っているのを見ました。1メートルくらいありました。ずいぶん丸みを帯びて走って来てます。あれはもう、真正面で出会ったら、よく事故が起きなかったなあと思って…」 同じ防犯カメラには、先月も…クマが駐車場の脇を通り過ぎていきます。その後、川沿いを走っている様子が映っていました。この翌日、近くで一頭のクマが捕獲されましたが…きのう6日、再び同じ場所にクマが現れたのです。 Q.ということはまだまだいる? 「いますよ」 そして、きょう7日も近くで… 「上の窓から見て、そしたらもうここにいて、歩き始めて…」 地面にはクマの足跡が残されていました。 「隣の人とかに教えなくちゃと思っても、怖くて外に出られなかったです」 ■“街クマ”対応吹き矢人材養成へ クマによる人的被害は230人、出没件数は3万6000件を超え、どちらも過去最多となりました。 クマに襲われ亡くなった人が全国最多5人の岩手県。 市街地でのクマ被害に悩む、盛岡市では―。 (盛岡市内舘茂市長)「中心部に出た場合にはなかなか緊急銃猟というのは難しいということもあります。“吹き矢”による対策、麻酔実施者として、新たに市職員の獣医師等7名を確保して」 市長は、“麻酔吹き矢”で捕獲にあたる獣医師ら7人を新たに養成する方針を明らかにしました。 ■市街地クマ“吹き矢園長”フル稼働 先月、檻を破り、リンゴ倉庫に立てこもったクマ。銃が使えない中、捕獲のカギとなるのは“麻酔吹き矢”。吹くのは、動物園の園長です。 3発の麻酔吹き矢で、クマを眠らせます。盛岡市の中心部に出没したクマ。現場に駆け付けたのは、リンゴ倉庫で“吹き矢”を放った園長です。この1週間後、地下駐車場にクマが侵入した際にも…さらに―。 「あ、やばい、クマいるよ、クマいるよ」 (笹原知穂記者)「クマは現在あちらの木の上にいます」 ここで登場したのも園長です。クマに向け、吹き矢を構え… (笹原知穂記者)「先ほどまで木に留まっていたクマが今下に降りてこようとしています、吹き矢も刺さっています。あっ、降りてきました。お寺の奥にクマが逃げていきました。」 “麻酔吹き矢”の使い手は、県内でもごくわずかだといいます。 (盛岡市内舘茂市長)「その対応できる園長ですね、動物園の仕事はちょっと解放していただいて、そちらの方に集中をするようにというような話もしております」 県内でただ1人、市街地で麻酔の対応にあたっているのは、盛岡市動物公園の辻本恒徳園長。64歳、麻酔吹き矢歴25年の大ベテランです。 (盛岡市動物公園(獣医師)辻本恒徳園長)「これは2本をつなげて使いますと長くなるので、遠い距離でも打ちやすくなるということですね」 筒状で、1本の長さは約1メートル。麻酔薬を入れ、息を吹いて飛ばします。筋肉に到達するよう、脂肪の薄い胸や上腕などを狙い、早ければ5分ほどで効果が出てくると言います」 (盛岡市動物公園(獣医師)辻本恒徳園長)「動物園の中で猛獣、檻の中に入っていけないような例えばライオンとかピューマとかクマには、これ(吹き矢)で麻酔をかけると、それが普通の業務、動物園にとってはですね。外のクマはその延長線上で使っているということ」 実際に、“吹き矢”を吹いてもらうことに… 命中し、針が段ボールに突き刺さります。確実に麻酔を入れるため、現場でも“クマと約5メートル”のこの距離で矢を吹きます。 吹き矢を放つこと自体は、誰でもできますが、麻酔薬を扱うための資格が必要です。新たに7人の“麻酔吹き矢”の使い手を養成する盛岡市。園長は歓迎しつつも… (盛岡市動物公園(獣医師)辻本恒徳園長)「練習が本番ですからね。現場の状況が同じものはないですから。その時にどういうふうにクマが体を出してもらうか、そこに当てるか、それを危険なくやるにはどうすればいいかというのをやっぱりもう考えるところはやっぱり大変ですね」 12月7日『有働Times』より





