毎週 月曜~金曜 あさ5:10~

アサコレ!コラム

石川啄木の“実態”はこうだった!? ~初恋~

2020年09月16日

[アサコレ!コラム]

 「はたらけどはたらけど 猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり ぢつと手を見る…」といえば石川啄木。

 この短歌からは清貧な印象を受けますが、そんな啄木をうそつきで見えっ張り、酒飲みで女好きの歌人として描いている作品があったんです。

 そのタイトルは「啄木鳥探偵處(きつつきたんていどころ)」。推理作家の伊井 圭(いい・けい)さんが1996年に発表した推理小説で、石川啄木が探偵、言語学者の金田一京助がその助手という設定。TVアニメにもなりました。

 物語の舞台は明治時代末期。そこでの啄木はケレン味…歌舞伎用語で「ウケを狙う」とか「はったりやごまかしをきかせたさま」を言いますが、ケレン味たっぷりで、芝居がかった人物として描かれます。

 当時の日本の文学界は最先端のポップカルチャーであり、活躍する文士たちは新聞にゴシップが書き立てられる今の芸能人に近い存在でした。

 本当に「清貧の歌人なんて嘘(うそ)っぱち、啄木は女好きで借金ばかりしていたダメ人間だった!」という評価が残っている一方で、それ自体が、実は意図的な自己演出だった可能性があるんです。

 啄木は、上京したばかりの北原白秋に浅草遊びを教えたり、家出して上京してきた青年の家賃を肩代わりしていたことがあります。上京してきた若者には身銭を切ってでも世話せずにいられない面倒見の良い“兄貴肌”だったんです。

 歌人の山田航(やまだ・わたる)さんによれば「兄貴肌の部分をおくびにも出さず、啄木は“わがままで自分勝手な男”を演じていたのです。彼は高尚な文学者ではなく“芸人”のような存在だったので、そのダメ人間ぶりをあげつらうほど彼の思うつぼだった。明治時代の文士はトレンドリーダーであり、インフルエンサーだった…」と語ります。

 なるほど、そう聞くと石川啄木の本質はやっぱりこっちと思えてきて…。

 M『初恋』菅原洋一

 石川啄木の『初恋』を菅原洋一さのボーカルで…。これだけのものが書けたら「うそつきで見えっ張り」でも許しちゃうな~。

 ※このコーナーは、日々報じられる数多くのニュースの中からピックアップした話題を再構成しています。

バックナンバー