今年で400周年!受け継いだ伝統を後世へつなぐ小倉祇園太鼓の取り組み ~ふるさとWish北九州市~
毎年7月になると小倉の街のあちこちから、あるリズムが聞こえてきます。表と裏で音の高さが違う両面打ち太鼓とヂャンガラと呼ばれる摺り鉦(すりがね)の音です。この時季の小倉では、北九州市の夏の風物詩・小倉祇園太鼓に向け練習をしている人達の姿が多く見られます。彼らは町内会や企業単位でチームを構成しており、今年は7月20日(土)に開催される小倉祇園太鼓の競演大会に向けて練習に励んでいるのです。
努力が実り、国の重要無形民俗文化財に!
そんなチームの1つ、金田第一町内会を訪れました。リズムの正確さや立ち振る舞いを競う競演大会で、優勝経験もあるチームです。「手抜きをしたら、その子は外す」と子ども達に向けて厳しい言葉も飛び出す練習風景。その声の主は、小倉祇園太鼓 保存振興会の企画委員長・日高 洋平さんでした。
「練習してもどれだけでも上手になれる気がして。探求心をくすぐられる」と小倉祇園太鼓に魅了されている日高さんですが、その継承については危機感を抱いているといいます。先ほどの、子ども達への厳しい言葉や熱心な指導は、過去に小倉祇園太鼓の苦しい時代を経験したことにもよります。
今から15年ほど前は、浴衣を脱いでお酒を飲みながら太鼓を叩くことは当たり前という時代でした。しかし、その風紀の乱れについて市民から苦情が届くようになり「そんな祭りならやめてしまえ!」と言われるまでに。「それが、皆の危機感につながった」と日高さんは当時を振り返ります。
小倉祇園太鼓は、小倉城を築城した細川忠興が京都の祇園祭を取り入れ始まったとされている歴史ある祭り。当時の日高さん達のような若い世代もその伝統を改めて周知し、緊迫感を取り戻そうと取り組んできました。その結果、このヂャンガラと太鼓の三拍子のリズムなどが他に例をみないと評価され、なんと2019年春に国の重要無形民俗文化財に指定されたのです。
「3大祭りとして、博多(祇園山笠)や戸畑(祇園大山笠)と行動することが多いけれど、ようやく少し肩を並べることができたかなと思う」と謙虚に語る日高さん。しかし、喜ばしい出来事の一方で、新たな課題にも直面しているといいます。
100年後までをも見据えた取り組み
鉄の町として栄え、かつては人口100万人を超えていた北九州市。近年は人口減少に歯止めがきかず、中心部の小倉でも高齢化が進んでいるといいます。実は競演大会でも、同じようなことが起こっているのです。登録されている122団体のうち、今年は20団体ほどが不参加に。日高さんは、「参加者が少しずつ目減りするということについて、他の祭りを参考にしながら、増やすことにも取り組まなければ」と語ります。
そんな熱い想いをもっている日高さんは学生服の店を経営する傍ら、小倉祇園太鼓の保存振興会の企画委員長として日々奔走しています。ある日は、ボランティアとして参加してくれる大学生に、祭りの歴史や太鼓の魅力を伝える活動をしていました。
他にも、今年は初めての取り組みとして、未経験の子どもや大人を集めて太鼓や山車(だし)を体験してもらおうと「体験山車」というイベントも実施しました。「実際に太鼓をたたいたり、祭りに参加してみたりしないとわからない部分もある。もっと祭りに興味をもってもらいたい」と日高さんはその狙いを話してくれました。
参加した子どもたちは、「初めてやってみて、うまくできたのでうれしかった」「祭りでやってみたい」など、その楽しさを感じることができ、興味を持ったようです。
小倉祇園太鼓で、街に賑わいを取り戻したい…。日高さん達の挑戦はまだ、始まったばかりです。「100年後も今以上にこの祭りがみなさんに愛されるような礎(いしづえ)を、これから1年ずつ積み上げていきたい」と今後の展望を語ってくれました。
本日から始まる小倉祇園太鼓。400周年を迎える今年は、さまざまなイベントもあるので、この週末はぜひ北九州市の小倉へ足を運んでみてください。
■小倉祇園太鼓 日程
2019年7月19日(金)宵祇園
2019年7月20日(土)競演大会
2019年7月21日(日)廻り祇園
※この記事は2019年の情報です(「シリタカ!」7月17日放送)。
※2023年の「小倉祇園太鼓」は7月に開催予定です。