重厚なスープケトルで旨味を絞り出す豊潤豚骨。「幸心堂」 年間300杯! 豚骨戦士 福岡のラーメンを斬る! VOL.28 ~ふるさとWish 大野城市~
周辺の春日・那珂川と並び、郊外のラーメン激戦区である大野城市に「博多ラーメン 幸心堂(こうしんどう)」という店がある。カウンター前に据えた巨大なスープケトルで豚頭、ゲンコツ、ロース骨を炊き込み、ガツガツ叩いて骨粉を程よく含ませる正統派豚骨。福岡、鹿児島の醤油を使い分ける定番豚骨と豚骨醤油。さらにホタテの旨味、アオサの風味を立たせた塩豚骨も加えた3本柱。“昔ながら”と“洗練”がうまく溶け合う豚骨ラーメンが人気を集めている。
博多一風堂から始まった藤野家のラーメン道。 純豚骨、塩豚骨どちらも旨い!
「幸心堂」は、藤野亮一さん(1974年福岡市生まれ)をはじめ、父母、兄の藤野ファミリーが迎えるアットホームな店。亮一さんは約25年前、博多一風堂に入店したことをきっかけにラーメン道をまい進。アルバイト時代も含め14年間一風堂で勤務し、全国の新規店舗立ち上げにも携わってきた。
福岡空港に続き、先日親不孝通りに出店した「まんかい」の奥長さん、米マイアミ出店も果たした「薩摩 思無邪」の前村さん、うどん酒場「ゆうのや」の中村さんらも、「幸心堂」の藤野さんと同時期に切磋琢磨した一風堂の卒業生。さすがに、そうそうたる顔ぶれがそろっている。
藤野さんは満を持して自身の店「幸心堂」を2011年に開業した。「自分でやるとなった時にまずイメージしたのは、名物オヤジがいるような昔ながらの店。あまり奇をてらわずにシンプルな博多ラーメンを出したいなと。場所も、家族連れがより来てくれそうな大野城市を選びました。一風堂時代の仲間とは今も親交が深く、活躍を聞いて刺激をうけますが、私はこの1店舗で十分。家族とともに店を守り、地元民に親しまれる名物オヤジであり続けたい」と藤野さんは話す。
藤野さんの“本気”を感じた父、兄も仕事を辞め、家族でのラーメン店経営を決意。それまでアニメーターの仕事をしていた父の八洲男さんが、愛らしい豚のロゴや看板を手掛けた。
厨房で存在感を放つスープケトルは直径60cmある巨大なもので、約50kgの豚骨(豚頭、ゲンコツ、ロース骨)を12時間かけて煮込む。一風堂から譲り受けたというこのタイプのケトルは「まんかい」でも見ることもできるが、火力が強く、熱伝導もいい。そしてハンドルをまわすとケトルが傾き、スープを取り出しやすいのも利点だ。麺は一風堂の製麺所から仕入れる、切刃26番の細・角ストレート。チャーシューは豚肩ロースを採用し、みずみずしさを損なわないよう切り置きはしない。丁寧に焼き目をつけてから丼にのせるので香ばしく、スープが冷めにくい。
豚骨は福岡ジョーキュウ醤油のかえし。豚骨醤油は鹿児島の醤油を使い、より甘味を感じる味わいに。塩は、ホタテをかえしに加えているほか、揚げたホタテの油も入れているので、魚介風味が引き立つ“潮”豚骨スープに仕上げている。
大野城市「幸心堂」がある周辺は大型の商業施設が点在しているエリア。
目の前に駐車場もあり入りやすいので、買い物ついでにフラリと寄ってほしい。
【幸心堂】
住所:福岡県大野城市若草1-4-4
電話:092-595-0242
営業時間:11:00〜15:00、17:00〜21:00(LO20:45)
休み:水曜(祝日の場合営業)
席数:14席
駐車場:8台
上村敏行(かみむらとしゆき)。1976年鹿児島生まれ。2002年よりラーメンライターに。以降年間300杯を食べ歩き「ラーメンWalker」はじめ各媒体での執筆活動、ラーメンイベント監修などを行う。KBC地域リポーター。
※この記事は2019年の情報です。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。