草刈りの救世主現る!高齢化に悩む町長の大いなる決断~ふるさとWish筑前町~
筑後平野の北部に位置する福岡県筑前町は、広大な田園地帯が広がる農業地帯。甘くて瑞々しい梨をはじめ、おいしい農産物に恵まれています。季節ごとに美しい風景を見せ、観光地としても人気ですが、そんな町にはある大きな悩みがありました。
美しい風景が広がる町が抱える悩みとは
「しぶしぶやっている状況です」、「地獄よ…できることならしたくない」、次々と町民の口からもれる悲壮な叫び。それは町民が担う草刈り作業について。筑前町にも到来する高齢化の波によって、農作業の一つでもある草刈りが由々しき問題となっているのです。
筑前町には東西を流れる草場川という川があります。川水は農業用水として重宝され、美しい桜並木は多くの観光客で賑わう筑前町が誇る自然の一つです。しかしながら、現場に行ってみると両岸に雑草がびっしりと生え、大人の腰の高さほどある場所も。地元農家約100人で年2回、延べ10㎞を手入れしていますが、年々、その作業が大きな負担になっているといいます。
「草が伸びてくると見苦しい。桜並木の辺りも刈っておかないと景観を保てない。ただ、年齢的にかなりきつい作業なんですよ」と町民は話します。実際、参加する町民の平均年齢は60歳以上。草刈りは大変な重労働である上、炎天下の作業は年齢的にも体力的にも危険といわざるを得ません。半世紀以上続く町の景観保全活動が存続の危機にさらされていました。
ラジコン草刈り機を投入せよ!
「草刈りは、単に景観美のためだけではありません。雑草が茂ると見苦しさ以上に、通行の妨げになったり、病害虫が増え農産物に影響を及ぼしたりと、さまざまな問題も生じてきます。だからこそ、草をきちんと刈るというのが町の考え方として根付いているのです」と話すのは、田頭喜久己町長。元米農家である田頭町長は、草刈りに懸ける町民のたゆまぬ努力を称えます。しかしながら、高齢化は免れないのが現状です。
そこで田頭町長は、「ラジコン草刈り機を導入」という大胆かつ斬新な決断を下しました。今年4月に発売されたばかりの最新機器「神刈」は、遠隔操作が可能で、最大作業角度45度と高機能の草刈り機。しかしながらその費用は1台なんと350万円!筑前町にとって「大いなる決断」であることは間違いありません。
キャリア40年のプライドvs 350万円の高機能で頂上決戦!
果たして費用対効果はあるのか…?おせっかいながら「シリタカ!」が、「神刈」の機能を検証する「草刈り頂上決戦」をお膳立て。町一番の草刈り名人・内堀勝磨さん(62歳)と除草対決してもらいました。
制限時間10分間、草場川の土手をどれほど刈れたかを競う頂上決戦がスタート!「43年のキャリアに賭けて負けられん!」と話していた内堀さんですが、開始早々、草刈り刃に雑草が絡まり苦戦を強いられます。その間、「神刈」は圧倒的パワーでぐんぐんと雑草を刈り込んでいきます。
軍配は…56m刈り込んだ内堀さんに対し、「神刈」は驚異の101m!「除草作業にとられていた時間を、これからは畑で野菜を作る時間にできるという点でも助かるね!」と内堀さんは「神刈」の機能を称賛しました。町では今後、町民への貸出も検討しているそう。「神刈」は除草作業だけでなく、農作業の効率化にも大きく役立つ存在となりそうです。
近年、機械化・ハイテク化が進むと同時に、「人力」の良さが失われると懸念の声も聞こえてきます。しかしながら、機械を操縦するのが「人」であることは変わりません。歴史や伝統、それを受け継いできた人々の思いを知った上で、「人」がハイテク機械を使うことで、新たな考えや価値観が生まれ、より良いものを生産していくことでしょう。筑前町の「神刈」はそれをいち早く、私たちに教えてくれたのかもしれません。きっと筑前町は一層、魅力に満ちた街になるはずです。
※この記事は2019年の情報です(「シリタカ!」8月14日放送)。