「日々、触れるもの」(福岡県大川市)

中学時代にスウェーデン家具の魅力に触れ、
「これからは家具の時代」と決心した吉住柚香さん。
現在は日本全国にファンを持つ広松木工で家具職人として働いている。
年齢は25歳。何気ない会話を交わすときは柔和な表情だが、
作業台の前に立つと、職人の顔つきに変わる。
まるで木材と会話をしているようだ。

広松木工の家具全般に携わる吉住さん。
この日はラビットチェアの組立をしていて、ウサギの耳を形にした背板を、
赤ちゃんの背中を叩くように、座面に打ち込んでいた。
「子どもの家具を作るときは緊張する」そうで、安全面はもちろんだが、
小さな子どもが初めて「家具」として触れるものになるかもしれない、
という思いもあるそうだ。

2世代、3世代に渡って座ってもらえると嬉しいと話す吉住さん。
きっとその思いは叶うだろうし、ラビットチェアに触れて育った子どもは、
木材家具が好きな大人に成長するだろう。

そんな吉住さんが未来に残したい風景は「榎津の町並み」だ。
1950年に広松木工が創業した土地でもあり、風情豊かな家具の町の光景が広がっている。
ゆっくりと散歩するのに最適な場所だ。

そんな榎津の、あまり知られていない魅力を吉住さんが教えてくれた。
「組子の看板があってとてもお洒落なんですよ」。
確かに町の看板が組子になっている店が見受けられる。
見落としてしまいそうなものだが、吉住さんが木材を愛しているから
見つけられた風景だろう。
そんな小さな「榎津の心意気」が、より一層、町並みを美しいものに感じさせてくれる。

※この記事は2022年の情報です(「STORY」10月9日放送)。

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