「音の彫刻」(福岡県福岡市)
日本に古くから伝わる伝統的な楽器「筑前琵琶」の製作技術保持者として2022年3月に福岡県指定の無形文化財に認定されたドリアーノ・スリスさん。
48年前日本に初めて来たとき、ラジオから流れてきた筑前琵琶の音色が運命を変えた。
生まれて初めて耳にする旋律に心を揺さぶられ、当時福岡県指定無形文化財の筑前琵琶職人・吉塚元三郎氏に師事することになる。
琵琶には決まった大きさがないそうだ。
1本の木を削って作られるので一つ一つ形も違えば、音も変わってくる。
ドリアーノさんは木を叩きながら音色を探し出し、その木が持つ音の魅力を引き出しながら彫っていく。
まさに“音の出る彫刻”だと語る。
近年は、修復の依頼が多いという筑前琵琶。
一番いい音色の厚みで彫られている琵琶を削るということはその楽器を壊してしまうようなもの。
作った人の気持ちを想像しながら当初の状態を再現する。
「元に戻す」ということが「修復」だと語る。
そんなドリアーノさんが未来に残したい風景は「舞鶴公園」。
福岡城跡にある公園で、趣味の凧揚げでよく訪れるという。
公園の自然と風を感じながら凧を揚げている間は、自分が鳥になったような気分になり、誰の言葉も聞き入れない。
心を空っぽにさせる大事な儀式のようでもあり、欠かすことのできない場所だと語る。
※この記事は2023年の情報です(「STORY」1月22日放送)。