「貝と原風景」(福岡県柳川市)

柳川市で昭和22年から漁具関連の器具を作っている大城鉄工所。
有明海でアサリなどの貝類をとるための「鋤簾(じょれん)」を生産している数少ない会社で、3代目の大城英義さんが工場でコツコツと作業を続けている。

鋤簾の見た目は単純な構造だが、その骨組みは非常に繊細だ。
丸鋼とよばれる鉄の棒を窯で熱して、ハンマーで叩き、先端を鋭くする。
そうすることで鋤簾の爪先を作るのだが、発注したお客さんの身長や年齢に合わせて、その角度を変えているという。
いかに楽に鋤簾を沈みこませることが出来るか。
長く愛してもらうために、経験という勘を頼りに、オーダーメイドの鋤簾を作っている。

昭和中期までは1年に数百台以上の鋤簾を作っていた大城鉄工所だが、今では年に数台つくるかどうかになった。
その理由の一つに、有明海でとれるアサリの数の減少があるという。
漁師町として賑わっていた町並みも、ずいぶんと姿を変えてしまったそうだ。
それでも大城さんが鋤簾を作るのは、鋤簾を求める人がいること。そして、鋤簾という文化を残すためという強い思いがあるからなのだ。

そんな大城さんが未来に残したい風景は「鋤簾がある有明海」だ。
遠浅の有明海で鋤簾を使ってアサリをとる。その際にアサリと鉄がぶつかって「シャンシャン」と音を鳴らす。
その音だけで有明海のアサリが美味しいということが分かる。
八幡海産丸の漁師さんに協力していただき、アサリ漁を見せていただいた。
「やっぱり酒蒸しですか?」とたずねると「有明海のアサリは蒸すだけで抜群においしい」とのこと。
ならばということで試してみると、その通り。口の中で豊かな有明海の風味が広がった。

※この記事は2023年の情報です(「STORY」3月12日放送)。

STORY#147_大城鉄工所

住所:福岡県柳川市古賀308-9

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