町外へ発信した魅力が内側を照らす〜「遠賀これくしょん。」が紡いだ地域の絆(福岡・遠賀町)【まち歩き】

「遠賀町の魅力って何ですか?」 そんな単純な問いかけに、すらすらと答えられなかった日常のもどかしさ。 そこから始まった小さな活動が、いつの間にか地域の人々を結びつけ、町に新たな活力を生み出していました。 子育て中のママたちが立ち上げた「遠賀これくしょん。(遠これ。)」の2年間の歩みは、外への発信が内側の充実につながるという、素敵な循環の物語です。
■「答えられない」から始まった地域愛
「遠賀町の魅力、特産品は何?と聞かれたときに、うまく答えられなかったんです」
そう語るのは、「遠賀これくしょん。」のメンバー小島さん。約2年前、子育て中の4名のママ友たちが集まって立ち上げたこの団体。元々はお子さんの習い事のサッカーつながりで知り合った仲間たちでした。
「自分たちが住む町なのに、その魅力をうまく伝えられない」というもどかしさが、彼女たちの行動の原点になりました。外部の人に町の良さを説明できないことへの焦りが、逆に地域を見つめ直すきっかけとなったのです。
■マルシェから始まる地域の「コレクション」
活動の中心となっているのは、遠賀町のイベントやマルシェの開催やお手伝い。年に4回ほどのペースで、町の魅力を集めた場を創出しています。
特に思い出深いのは、2023年4月に結成後初めて開催したマルシェだといいます。初めての試みながらも、多くの方が訪れ、予想以上の反響がありました。

「地元に住んでいるけど知らない商品を知ることができた」 「知ってはいるけど食べたことがない特産品を試食できて嬉しかった」
そんな声が、活動の原動力となっていきました。

■知られざる遠賀町の「宝物」たち
遠賀これくしょん。が発信している町の魅力は多岐にわたります。農家直送の新鮮なトマトやミニトマトといった農産物、菜種油、ポン菓子、はちみつ、燻製商品、洋菓子、中華料理店の調味料、デコパージュしたクラフト品や石鹸など地元でしか味わえない特産品の数々。

それらを発信するマルシェでは、単に商品を並べるだけでなく、生産者に実際に立っていただき、想いや商品の背景も伝えることを大切にしています。
そうした活動を通じて、メンバー自身も新たな発見があったといいます。
「遠賀町の人々は本当に心が豊か。困ってない、四苦八苦してない。本当にみんな人が良くて、食べ物も美味しい」
外に発信しようとして、改めて気づいた遠賀町の本質的な魅力。それは物質的な豊かさというよりも、日常の中にある「心の豊かさ」だったのです。

■子育てとの両立が生んだ新たな絆
子育て中のママたちによる活動は、決して楽なものではありません。会議は夜になることも多く子どもを見ながら行うなど、イベント準備と家事・育児の両立は常に挑戦です。
しかし、そこから生まれるメリットも大きいと言います。
「交流、繋がりを得ることができる。子どもが卒部してしばらく経つがまた会えて交流できて、お互いに助けられている」。

同じ立場の仲間との活動は、子育ての悩みを共有する場にもなり、メンバー同士の絆を深めていきました。また、活動を通じて地域のさまざまな人々と知り合うことで、自然と交流が広がっていったのです。

■外への発信が内側の充実に
最も嬉しかった成果を尋ねると、次のような答えが返ってきました。
「イベントに来た人が直接お店に来てもらえるようになった」 。
「人との繋がりが生まれた」。 「イベントに毎回来てくれるリピーターができた」。
当初は「遠賀町を外に発信したい」という思いで始まった活動。しかし気がつけば、地元の人同士の新たな繋がりを生み出す場になっていました。
「この活動が、今後マルシェやイベントなど街の活性化に繋がるきっかけになってもらえてたら嬉しいな」。
そう語る言葉には、外への発信を目指していた活動が、いつの間にか町の内側の活性化につながっていることへの気づきと喜びが感じられます。

■行政や地域との連携
遠賀これくしょん。の活動は、個人の集まりにとどまらず、地域全体を巻き込む広がりを見せています。商工会や「遠賀みらいテラス」との連携、宗像アートコレクションのような他自治体の団体のイベントといった広域での取り組みへの参加など、活動の輪は着実に広がっています。
そうした連携が、町全体の活性化につながっていることを実感しているといいます。

■子育て環境としての遠賀町の魅力
遠賀これくしょん。のメンバーたちは、遠賀町の子育て環境の良さも強調します。
「育てやすい環境がある」。 「高校生まで手厚い医療費サポートがある」 。
「給食費が中学生まで半額で、しかも美味しい遠賀の特別栽培米を使った給食が素晴らしい」。
子育て世代だからこそ実感する町の魅力。それを同じ子育て世代に伝えることで、町の魅力をより多角的に発信しています。

■お気に入りの町のスポット
メンバーそれぞれが好きな遠賀町のスポットも個性的です。 「桜がきれい」 「電車が見える公園」 など、日常の中にある小さな幸せを大切にしていることが伝わってきます。
これらは派手な観光スポットではないかもしれませんが、実際に暮らす人たちが本当に愛する場所。そうした等身大の魅力を伝えることで、より親しみやすい町のイメージを作り上げています。

■外への発信が内を照らす、その好循環
「遠賀これくしょん。」の2年間の活動は、地域の魅力を「外に発信する」という当初の目的を超えて、思わぬ効果をもたらしました。
外に向けて町の魅力を発信しようとした活動が、結果的に地元の人々の町に対する誇りや愛着を深め、住民同士の交流を促進。さらに、そうした内側の充実が新たな町の魅力となり、それがまた外部に発信される——そんな好循環が生まれているのです。


「遠賀これくしょん。」の歩みには、地域活性化のヒントがたくさん詰まっています。外に向けて発信することで、内側が照らされる。そんなあたたかな光が、遠賀町全体を包み込んでいるようです。

ぜひ今後開催されるマルシェに足を運んでみてはいかがでしょうか?

■「遠賀これくしょん。」
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