
日田祇園へGO!週末おすすめ日田トリップ!祭りとまちの暮らしに息づく蔵「クンチョウ酒造」日田の心を醸す酒造り(大分県・日田市)【まち歩き】

大分県日田市の豆田町を歩くと、江戸情緒を色濃く残す町並みに出会います。石畳の通りに古い商家が並び、その一角に「クンチョウ酒造」の大きな蔵が堂々と構えています。訪れた日はよく晴れ、明るい陽射しの下で多くの観光客が行き交い、店先ではお土産を手にした人々が足を止めていました。
この日、蔵人の冨安大二郎さんにお話を伺いました。
「もともと江戸時代から、千原家が酒造業などを営んでいた「丸屋」があった場所です。豪商と呼ばれた千原家も時代の流れには逆らえず廃業に追い込まれましたが
親族であったうちの先祖である冨安家が昭和の初めに蔵を引き継ぎました。」と冨安さんは語ります。
昭和15年に冨安家が独立して「クンチョウ酒造」が誕生。戦時中の原料不足や配給制の中でも、品質を落とさない酒造りを続けてきたとのこと。
当時は水増しや精米歩合を下げて量を確保する蔵も多かったといいますが、クンチョウ酒造では「うまい酒をつくる」ことを最優先にし、その姿勢を今も変えずに受け継いでいます。

【地域の誇りと季節の味わい】
蔵元ショップ「薫長酒館」には、定番の銘柄から限定酒までがずらりと並んでいます。特に目を引いたのは、「薫長 特別純米日田祇園ラベル」です。豪華絢爛な山鉾が描かれたラベルからも、地域の祭りを大切にする思いが伝わってきます。
単にお酒を売るだけではなく、この町の行事や暮らしに寄り添う蔵でありたいという気持ちが込められているように感じられました。

夏のおすすめとしてご紹介いただいたのが、夏限定の「本醸造 涼麗辛口」です。冷やすと爽やかな香りとキレが際立ち、暑い季節にぴったりのすっきりした辛口が楽しめます。
常温保存ができ、飲む前に冷やすだけで手軽に涼しさを味わえるのも魅力です。アルコール度数は14度と軽めで、夏の晩酌にも心地よい一杯。刺身や冷たい料理と合わせて、喉越しの良さを堪能してほしいと感じます。

【酒蔵がひらく、町のにぎわい】
店内には試飲コーナーも設けられており、気になる銘柄を少しずつ味わうことができます。日本酒にあまり馴染みのない人でも、好みを見つけるきっかけになる点が魅力です。実際に飲み比べることで、米の種類や造りの違いを感じやすくなるのも、蔵元ならではの体験といえます。
同じ酒蔵の中には「旅の舎 sakabayashi」があり、甘酒ソフトクリームやノンアルコールのスイーツ、オリジナルの酒器などが揃っています。観光の合間に立ち寄ってひと息つけるだけでなく、ここでしか手に入らない品を選ぶ楽しみもありました。
さらに通りを挟んだ向かいの建物には「発酵舎KOGURA」があり、麹を使ったランチやデザートを楽しむことができます。

「蔵って、敷居が高いと思われがちなんです。だからこそ、気軽に立ち寄ってもらえる場所にしたい。ここで日本酒に興味を持つきっかけになればと思っています」と冨安さんは話してくれました。
【地域とともに】
日田祇園祭は、この町を象徴する行事です。提灯に照らされた山鉾が夜空を進む姿は、毎年の夏にこの通りを華やかに彩ります。祭りの日は酒蔵の周辺にも人が集まり、にぎわいが広がります。
冨安さんは、こうした行事や人の集まりに酒蔵が寄り添ってきたことをとても大事にしているようでした。話を伺う中で印象的だったのは、「普段はそれぞれ別の商売や仕事をしている人たちが、この祭りでは一つの目的に向かって心を合わせる」という言葉です。商店街や自治会、地域の住民が立場を超えて力を合わせる様子に、町の結束の強さが感じられました。
単に酒をつくるだけではなく、この土地の文化を受け継ぎ、地域に開かれた場でありたいという思いが自然と伝わってきます。
製造から販売、商品開発までを自ら手がけ、訪れる人の声を次の酒造りに生かす姿勢には、蔵の未来を育てる責任感と町への深い愛着がにじんでいました。
豆田の町に根を張るクンチョウ酒造には、積み重ねてきた歴史と、これからを見つめる真摯な姿勢がありました。長い年月の中で育まれた味わいと、地域への思いが、訪れる人の心にそっと残ります。
日田を訪れた際には、ぜひこの蔵にも足を運んでみてください。きっと心に残る時間を過ごせるはずです
◼️『クンチョウ酒造』蔵元ショップ(薫長酒館)
住所:大分県日田市豆田町6-31 清酒 薫長醸造元敷地内
電話:0973-22-3121
営業時間:9:00~16:30
店休日:なし
駐車場:あり※自家用車10台、大型バスも可(要予約)
公式HP https://www.kuncho.net/
Instagram @kunchoshuzo
https://www.instagram.com/kunchoshuzo/