リピーター続出!!町民が溺愛する「猪熊のたれ」 ~ふるさとWish水巻町~
福岡県北九州市に隣接し、遠賀川に面する水巻町。町は県で4番目に小さく、人口約2万8千人。コンパクトな町ですが、大型スーパーや医療施設などが充実しており、町民も「のんびりしていて住みやすい」と語ります。しかし、「でかにんにく」しか特産品がないというのが町の悩みなのだとか…。
KBCの報道番組「シリタカ!」には、課題を乗り越えようと奮闘する福岡県民についてお伝えする「ふるさとのチカラ」というコーナーがあります。2019年6月6日(木)のこのコーナーでは、そんな水巻町で新たな特産品として注目されている“タレ”について紹介しました。
皿に残ったタレまで飲み干す?!
6月2日、水巻町の直売所「夢工房」で、あるタレの試食販売がありました。しかし不思議な光景が。タレで味付けした焼き肉を試食してもらったのですが、みなさん残ったタレまで飲み干していたのです。
試食した人が口々に“おいしい”と言っていたのは「猪熊のたれ」。江口洋子さんが、自宅で手作業でつくり、販売しています。地元のニンニクとショウガ、ハチミツなどの食材を、火を使わず3日間混ぜ込んでつくるそうですが、実はこれ、町民の約4割が知っている水巻町で有名なタレなのです。
「猪熊のたれ」が水巻で人気の理由は、そのおいしさはもちろん、町の歴史にもありました。半径1km以内に5軒もの焼き肉店がひしめき合うという、焼き肉激戦区である水巻町。焼き肉店「永昌苑」の店主も「焼き肉の好きな人が多いですね」と語っていました。では、なぜ焼き肉好きな人が多いのでしょうか?
「炭鉱の町」ならではの食文化が生んだタレ
「炭鉱の町やけんね」。町民のインタビューから、そのヒントを得ることができました。
1971年に炭鉱が閉鎖するまで、水巻町は多くの炭鉱労働者とその家族でにぎわっており、彼らの胃袋を満たしたのが焼き肉だったのです。店で食べるのはもちろん、当時は「自宅で焼き肉やホルモンを集まってワイワイと食べるのが流行っていて」と語る江口さん。市販のタレが好きではない江口さんのお母様・テル子さんが自宅で作っていたのが、現在江口さんが製造・販売している「猪熊のたれ」だったのです。
テル子さん作のタレはたちまち周囲で評判になり、地元の地名を取って「猪熊のたれ」と名付け、ついには販売されるように。「ずっと継ぎ足し継ぎ足しなので、母のタレはずっとこの中に生きているんですよ」と語る江口さん。
残念ながらテル子さんは7年前に他界しましたが、以降、江口さんが後を継いでいます。「みんなから(洋子さんが)“作ってよ”と言われて。タレを引き継ぐことで母が喜ぶんじゃないかな」と考え、受け継ぐことを決めたという江口さん。しかし、テル子さんから直接レシピを教えてもらった訳ではなく、残されていたタレをもとに、味を見ながら再現していったといいます。水巻町の名物になればという想いもあり、江口さんは今もたった一人で仕込み・販売・営業まで行っています。
「バーベキューのときに、(他のタレと)比べるんですよ。でもこっちのほうが絶対おいしい。友達もみんな知っている」「一時期なくなっていたけど、娘さんが継がれて安心した」「このタレを食べると他のは食べられんとよ」など、インタビューで町民が口々に想いを語っていたことから、その人気ぶりがわかります。
現在は、ふるさと納税の返礼品や町内外10カ所以上の店頭でも取り扱っています。そしてそのおいしさは、町を飛び出し隣の北九州市にも。北九州市若松区にあるイタリアンレストラン「THE 157」では猪熊のタレの販売だけでなく、メニューの「ローストビーフDON」にも使用しているとか。「塊の肉に染みこませ、仕上げに猪熊のたれをソースにして(使用している)」と語るシェフ。プロも惚れ込むおいしさなのですね。
簡単アレンジレシピ
江口さん、このタレを使った簡単レシピ「豚の角煮」を教えてくれました。豚のブロック肉と水を入れた鍋に猪熊のタレを入れ、わずか5分煮込むと出来上がり。盛り付けたあとに煮込んだタレをかけると、さらに美味しさが増すといいます。時短でおいしくという、家庭料理のニーズにもバッチリ合いますね。
今後は、新たにドレッシングの開発も検討中だとか。江口さんと「猪熊のたれ」の勢いが、水巻町の活性化につながっていくのかもしれません。
※この記事は2019年の情報です(「シリタカ!」6月6日放送)。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。