来館者数171%増!アイデアマンの館長が仕掛ける“図書館的”町おこし ~ふるさとWish苅田町~

就任以来、さまざまなイベントを企画して図書館への来館者を増やしている逆井館長。前年比で171%の来館者数、貸し出し冊数は141%というから驚きです

自動車産業やセメント工業がさかんな苅田町で今、工業とは無縁な“図書館”が注目を集めています。「メンくいな苅田」と題したラーメンイベントをはじめ、「伊能忠敬一行が食したお弁当」を食べる体験イベント、新元号発表前の元号予想イベントなど、このところ苅田町で面白いイベントが続々と開催されているといいます。その仕掛け人が、苅田町立図書館の館長・逆井 (さかさい)健さんです。2年前に館長に就任した逆井さんのもとを訪れると、パソコンとプリンターを使ってポスターの制作に勤しんでいました。

イベントをきっかけに来館者が増加!

おしゃれで解放感のある高い天井も特徴で、こだわりの構造は数々の建築賞を受賞している

とても図書館の仕事には見えませんが、逆井館長のその行動には理由がありました。町民にインタビューをしてみると「図書館は利用しない」「近いけれど行かない」「図書館離れしている」と図書館についてマイナスな声が多く聞かれます。全国的に見て、図書館での本の貸し出し数は2011年を境に減少傾向にありますが、苅田町立図書館でも同様に利用者が減り続けていたのです。

逆井館長が就任して以降、100以上のイベントを開催。2019年の夏だけでも、28のイベントを開催した

「1990年に開館した当時は、“最新”といわれた造りだったんです。苅田町立図書館のポテンシャルはもっとあると見えたので、それを生かそうと思いました」と話す逆井館長。実は、図書館の半分は本が並ぶスペース、残りの半分は住民がイベントなどを行えるコミュニティゾーンとなっているのですが、このコミュニティゾーンがほとんど使われていなかったのです。また、本が並ぶスペースも、本を選びやすくという心遣いからつくられた低い書棚に加え、解放感溢れる高い天井という快適な空間。さらに、町立図書館では全国7位の約32万冊と豊富な本が揃っています。「こんなに素敵な空間を活用しなければ、もったいない」と考えたのです。

そこで思いついたのが、「本を読みに来てくださいというよりは、おもしろいイベントがあるので一度図書館に足を運んでみませんか?というチャンスを作る」ということ。図書館が仕掛けたイベントは、2年半でなんと100以上!地元のお店を集めたパンのイベント「春のパン祭り」や「夜の図書館きもだめし」…などなど、イベント名を聞くだけでも、おもしろそうなものばかりです。

町民に話を聞くと「(図書館は)結構行っている。最近はいろんなイベントをやっていますからね」と話す男性や、「本を借りて帰るだけだったのが図書館に遊びに行ける…みたいな、図書館じゃない使い方もできる。館長、すごいな」と話す女性も。実際、逆井館長が就任して以来、来館者や貸し出し冊数は増加したといいます。

町民を巻き込みながら取り組む“町おこし”

アイデアマンの逆井館長は、一体どのような人なのでしょうか?現在52歳の逆井さんは、これまで販売・観光・出版など“人から注目してもらう”ことが重要な業種を経験してきました。また、“地域や商店街活性化アドバイザー”の肩書きも持っていたことから“注目してもらう”ということ知り尽くしていた人物だったのです。しかし元々は、山口県出身。縁もゆかりもない苅田町でしたが、たまたま館長の公募を見つけ、挑戦してみようと応募したことがきっかけだったといいます。「私は苅田町に拾ってもらった。図書館は、本や資料があるだけの場所ではなく、人と人が出会う場になる(ようにしたい)。今からの地域社会で、その場を作っていけることは大きいかなと」。

「皆さんが楽しいことが私も楽しい!」と話す逆井館長。館長自らがいつも笑顔でイキイキしている様子が町民にも伝わり、苅田町に“笑顔”が広がっているのかも

逆井館長は、もっと図書館を知ってもらうために日々奔走しています。ある日は図書館が来年30周年を迎えることから、町内のホテルで「30周年記念ライブイベント」の打ち合わせをしていました。「あまりイベントごとがないと聞くと、(図書館のイベントは)活性化につながりますし」と、打ち合わせをしていたホテルの副支配人も応援してくれているようです。

ある日の夜は、図書館の会議室でイベントの企画会議が行われていました。今度、福岡にキッザニア(子どもの職業体験ができる施設)ができることから「苅田キッザニア」など、面白い案が次々と出て盛り上がっている様子。しかし、実はこの日集まっていたのは図書館の職員ではなく地域の住民だというから驚きです。去年の夏から開催している夏休みの肝試しイベントも、発端は図書館のフェイスブックに書き込まれたアイデアから始まったといいます。

逆井館長が始めた取り組みは、もはや図書館だけでなく地域の人を巻き込み、町全体を元気にする手段として動き始めています。放送前日にも、「観光列車 ななつ星に手を振ろう」というイベントを開催しました。垂れ幕も作り、通過する列車に町民とともに笑顔で手を振る館長。「皆さんが楽しいことが、私も楽しい!」と笑顔で話す逆井館長の人柄が、苅田町を元気にしているようです。スタジオメンバーも、「人の魅力が町の魅力につながっていくということを感じさせてくれますよね」と、すっかり逆井館長のトリコに。

まだまだ館長のアイデアは止まらないようで、苅田町は自動車産業がさかんな町ということで「モーターショー」、コミュニティの場にしたいという想いから「ラジオ局開局」など、野望は尽きません。苅田町立図書館や逆井館長の動向に、これからも目が離せませんね。

■苅田町立図書館
福岡県京都郡苅田町富久町1丁目17−8
093-436-0946

※この記事は2019年の情報です(「シリタカ!」9月11日放送)。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。

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