子どもたちを笑顔に!女性絵本作家がつなぐ“縁”とは ~ふるさとWish遠賀町~

ネパールの子どもたちが持っているのは日本の絵本「メチャくんと仲間たち」

とあるネパールの小学校の授業で、絵本を音読したり、書き写したりする子どもたち。子どもたちがニコニコと手にしているその絵本は、日本人作家が手掛けた作品です。日本から遠く離れた異国・ネパールで、どうして日本人が描いた絵本が使用されているのでしょうか?その絵本を描いた遠賀町在住の絵本作家・さかいみるさんのもとを訪ねました。

日常の小さな幸せを伝えたい

「関わるすべての方に笑顔になってほしい」と持ち歩きにも便利なように、文庫本サイズの「メチャくんと仲間たち」シリーズを送り続けていると話すみるさん。

「日常生活以外は、一日のほとんどを、絵を描いて過ごしています」というみるさんが描いているのは、「メチャくんとなかまたち」という絵本。主人公の黒猫メチャくんと、その仲間たちが日常の中で起こる小さな幸せを見つけていくお話です。みるさんは、「小さな幸せがたくさん、日常にちりばめられている。それを大切にしていくことをお伝えしたいと思っています」と、これまでにシリーズ9作品を誕生させました。


幼い頃から絵を描くことが大好きだったというみるさんが、絵本作家としてデビューしたのは29歳の時。みるさんの描く心安らぐ世界観は多くの人々に愛され、さまざまな賞を受賞するなど、高く評価されています。結婚後、夫の故郷だった遠賀町に移住。個展を中心に活動する傍ら、町の公式キャラクターをはじめ、地元の信用金庫や企業のロゴやキャラクターブランディングを手掛けるなど、地域貢献につながるような制作活動も行っています。

“自分のできること”で被災地に支援を!

遠賀町の公式キャラクター「おんがっぴー」をはじめ、さまざまなキャラクターを世に生み出しているみるさん。

みるさんには、絵本作家としての人生を大きく変える出来事が起こりました。2011年に発生した東日本大震災です。「当初は募金などをしていました。でも、夫の“私たちにできることは絵本を作って届けることじゃないか”という言葉で、自分が得意なことで役立ちたいと思い立って」と、みるさんは「絵本deえがお」プロジェクトを立ち上げます。ブログやホームページなどで活動支援を募り、被災地に無料で絵本を届けるこの活動は、またたく間に全国から多くの賛同者が集まりました。

「被災後、ずっと泣いていた子が眠れるようになったと聞き、子どもには心を落ち着かせたり、安らぎを感じたりする“子どもの時間”がすごく必要なのだと感じました」とみるさん。今でもその活動は継続中で、送り届けた絵本の数は13万冊を超えたといいます。

大人気のメチャくんシリーズ

そうした活動を続けていた2015年、ネパール大地震が発生しました。建物の倒壊や土砂災害などで死者8700人以上。甚大な被害が生じました。

このニュースを知ったみるさんは、「東日本で震災があったとき、(ネパールが)支援してくれたと聞いていたので、ネパールにも絵本を送ろうと思って」と、すぐに行動を起こします。「メチャくんと仲間たち」をネパール語に翻訳。完成した絵本を持って現地に渡航し、直接子どもたちに手渡しました。「本当にすっごく喜んでくれて。その姿にとても感動しました。同時に、絵本は文化や風習、言葉なども飛び越え、国が違っても通じるものだと思い、嬉しかったですね」とみるさんは振り返ります。

絵本がつなぐ笑顔の架け橋

絵本でつながったネパールとの縁を感じる子どもたちからの手紙。みるさんは1枚1枚、大切にファイリングして保管している。

現在、ネパールでの協力者も増え、この4年で学校や孤児院、病院など絵本を送った施設は100以上にのぼりました。こうしたみるさんの活動により、笑顔になった子どもたちからは毎日のように、感謝の手紙が届けられていると嬉しそうにみるさんは話してくれました。

なぜ、これほどまでにネパールで喜ばれているのか―。その背景には、ネパールの生活事情がありました。現地協力者の一人、クリシュナさんは「ネパールでは、自分で絵本を買う経済的な余裕がないことが多い。また、絵本を読むという習慣がまだまだありません」と話します。

みるさん自身も、もっと多くの子どもたちに絵本を読む楽しさ、絵本から幸せを感じてほしいと、ネパール語版の新作に取り掛かっています。子どもたちが絵本にもっと親しめるよう、新作に登場するキャラクターは現地の民族衣装をまとうなど、ネパールの子どもたちへの思いも一層強く込められています。

人を支えて笑顔にするためには、「特別なこと」は必要なく、「自分ができる精一杯」をすればいい―。みるさんの活動から「寄り添いの心」こそが、人を笑顔にし、多くの手をつなぎ合わせる力になることを教えてもらいました。

絵本が繋ぐ“笑顔の架け橋”。子どもたちだけでなく、世界中の人々が笑顔でつながることを今こそ強く願います!


■さかいみる
徳島県生まれ。
1999年より作家としての活動を開始。現在、絵本制作、画家、キャラクターによるブランディングなどを展開中。
1999年、「ありくんのわすれもの」で自由国民社ホームページ絵本大賞のアドビ賞受賞。2006年、自身が手掛けたキャラクター起用の遠賀信用金庫メチャカードが全国信用金庫PRコンクールで最優秀賞受賞。2011年、アプリプレゼン大会で「メチャくんのいつもいっしょ」がサイバーエージェント賞受賞。
※みるさんの作品や、「絵本de笑顔」の活動について、興味がある方はぜひ、ホームページなどをチェックしてみて!詳しくは公式サイト http://milart.info/へ

※この記事は2020年の情報です(「シリタカ!」1月8日放送)。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。

エリア 気になるエリアの厳選情報をチェック!

もっと見る

ランキング 最旬の注目記事ランキングをチェック!