
25年6月リニューアル!創業30年老舗人気ケーキ店「ハイデルベルグ」の名物岡垣クーヘンが絶品(福岡・岡垣町)【まち歩き】

福岡県遠賀郡岡垣町に店を構える老舗パティスリー「ハイデルベルグ」。1994年の創業から30年、地域の人々に愛され続けるこの店は、今年6月に大胆なリニューアルを行い、新たな魅力を発信している。2代目オーナーシェフの河原徹さんに、店舗への想いと今後の展望について話を伺った。
■父から受け継いだ店への想い
河原さんが父親から店を引き継いだのは5、6年前のこと。関東や福岡市内の店舗で修行を積んだ後、故郷に戻ってきた。
「自分の店というよりは、父親の店をやっていくという感覚なんです」と河原さんは語る。「父親が早くに亡くなってしまったので、親孝行としてもこのくらいしかできないじゃないですか。やっぱり父親の意思とか、この地域に残してくれたものを引き継いでやっていきたいんです」。
お客様からの「味が変わったね」という言葉だけは聞きたくないという河原さん。「昔と変わらず美味しいね」と言われることが何より嬉しいという。

■リニューアルで新たな世界観
今年6月に行われた店舗リニューアルは、単なる内装変更ではない。「以前は町のケーキ店ならではの価格設定だった。今もケーキ業界の中では低価格で提供しています」と振り返る河原さん。近年の度重なる原価高騰もあり、価格改定せざるを得ない状況となった。価格改定した分、お客様へ提供する付加価値や購買体験を向上させるため、ブランディングや店舗のレイアウトを強化。
リニューアルのデザインは、奥様が好きな「Cot'e jardin」と、河原さんが「パンストック」で見た木のディスプレイからインスピレーションを得た。2社に依頼して作り上げた店内は、インパクトのある独自の世界観を構築している。
「値上げをしても、ありがたいことにお客さんが足を運んでくださっていて。原材料費がとんでもない上がり方をしている中でも、他店と比べて手頃な価格を維持しつつ、当店ならではの付加価値をこれからも提供できればと考えています」。

■地域に愛される看板商品
・「岡垣クーヘン」(税込150円)
1日2000個売れたこともある人気商品。卵の卵黄のみを使用し、カスタードクリームを限界まで詰め込んだ贅沢な一品。
「原価を度外視して提供している商品です。昔からあるお馴染みの商品で、まとめてお土産に買ってくださる方が多いんです」。
・「ハイデルベルグ」(税込460円)
店名を冠した看板ケーキ。父親が日航ホテルで作っていたレシピを受け継ぎ、カカオ分76%のチョコレートを使用した半生ガトーショコラのような仕上がり。
「チョコレートの価格が毎月のように上がっていますが、昔から同じものを使い続けています。しっとりとした食感が特徴です」。
・季節限定「まるごと桃のケーキ」(税込900円)
7月末から8月のお盆頃まで提供される夏の人気商品。桃を丸ごと使用し、芯を抜いた部分にカスタードを詰めてタルト生地に乗せた贅沢な一品。
■従業員が楽しく働ける環境づくり
パティシエ9人を含む従業員23人を抱える「ハイデルベルグ」。業界としては多い人数だが、河原さんには明確な理由がある。
「パティシエの世界は厳しい業界です。自分も泣きながら仕事をしていた経験があります。だからこそ、従業員が楽しく働ける環境を提供したい。従業員が楽しいと、その活気がお客さんにも伝わります」
現在、会社理念の策定や人事評価制度の導入を進めており、「自分たちが楽しむ」ことを前提とした組織づくりに取り組んでいる。
■顧客ニーズを重視した商品開発
「本当は都会的な綺麗なケーキを作りたいのですが、お客さんが求めているのはフルーツ系だったり、ボリューミーなタルトなんです」と河原さん。
お客様のニーズを考慮した商品開発を優先的に行い、自分の作りたい商品も開発する。この姿勢が30年間愛され続ける理由の一つだろう。

■地域活性化への取り組み
「常に話題性を持たせておきたい」という河原さんは、様々なイベントを企画している。コラボイベントの開催や、駐車場へのキッチンカーやお花屋さんの誘致など、地域全体への集客を意識した取り組みを行っている。
「岡垣町に人を呼び込んで、他の店にも恩恵があるようにしたい」という想いから、3年に1回の店舗内装変更や、他店よりも早い商品の入れ替えを実施し、話題作りにこと欠かない。
■今後の展望
河原さんが今後挑戦したいのは、コーヒー提供とネットショップの本格運用。
「エスプレッソマシンの設備は準備済みで、コーヒー提供を計画しています。また、冷凍ケーキのネットショップも開設済みで、特に『ハイデルベルグ』の冷凍発送を希望する声が多いんです」。
かつて岡垣町で育ち、関東などに移住した人々が「子どもに食べさせたい」という要望に応えたいという。現在は焼き菓子のみ地方発送に対応しているが、今後は冷凍ケーキの全国発送を本格化させる予定だ。

■地域と共に歩む未来
店舗前のベンチは、顧客が自由に利用できるフリースペースとして開放している。こうした細やかな配慮も、地域密着店ならではの魅力だ。
「父親から引き継いだこの店で、地域の皆さんに喜んでもらいたい」という河原さんの想いは、一つひとつの商品に込められている。創業30年の老舗パティスリーは、伝統を守りながらも革新を続け、次の世代に向けて新たな歩みを始めている。
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■『ハイデルベルグ』
住所: 福岡県遠賀郡岡垣町公園通り1-1-23
電話: 093-283-2446
営業時間: 10:00-18:30
定休日: 火曜日
Instagram:@heidelberg1994
https://www.instagram.com/heidelberg1994
ネットショップ:https://hb19941209.base.shop/