佐賀市の松原川沿いに佇む『SHIROISHIMORI(しろいしもり)』。店内に並ぶ色とりどりの御結びは、白石町で代々受け継がれてきた米と海苔を使い、一つひとつ丁寧に握られている。この店を営むのは、元海上自衛隊で家業を継いだ森卓也さん。生産者だからこそ伝えられる「食の物語」がここにある。
■被災地で目の当たりにした「食の力」
「実家で生産した米や海苔を自衛隊時代におすそ分けしていたんです。みんなから『美味しい』と言ってもらえて。私にとっては当たり前のものでしたが、そこで初めて白石の恵みの価値を実感しました」。
森さんの人生を大きく変えたのは、東日本大震災の災害派遣だった。
「被災者の方が食事で笑顔になる姿を目の当たりにして、食のありがたみ、大切さを改めて認識したんです。『食で人を幸せにしたい』。その思いが、家業を継ぐ決断に繋がりました」。
家業を継いでからも、森さんの心には一つの疑問があった。「どんな人が、どんな思いで食べてくれているのだろうか」。その答えを求めて、道の駅やスーパーの産直コーナーで販売を始め、やがてイベントで御結びを販売するようになった。
「『おいしい』という言葉、小銭を握りしめて再度買いに来てくれる子どもの姿。それが本当に嬉しかった」。
その経験が、店舗開設への原動力となった。佐賀県の6次産業化支援を受けて製造施設やデザインを構築し、2022年8月、自衛隊時代から抱いていた「生産者の想い・佐賀と白石の恵みをたくさんの方に知ってもらいたい」という思いを発信できる場として、この店をオープンさせた。
                                            
                                        
                                        
                                                                                    
                                                ■生産者だからこそ見えた景色
店舗を持ったことで、森さんの生産に対する意識にも変化が生まれた。
「お客様から生産現場のこと、今年の出来、環境状況、有明海の状況、台風や高温被害などを気にかけていただくんです。生産者として直接お客様と対話できることで、より良いもの――風味、形、味、口どけ――を今まで以上に生産したいという意欲が強まりました。次世代に続く産業にしていかないと。今までの生産者の枠を超えるようなことをしていきたいと思うようになったんです」。
                                            
                                        
                                                                                    自家生産のヒノヒカリとさがびよりの5kg・2kgの袋売り、量り売りでそれぞれ販売。取材時は特に新米の季節で、お客様からのオーダーで計量の最中だった
                                                ■「GOOD FARMER AND NEIGHBOR」に込めた想い
店のパッケージには、白石平野と有明海を舞台にした動物たちの物語が描かれている。そこに込められたコンセプトは「GOOD FARMER AND NEIGHBOR(生産すること、食べることが隣り合う仲間のようにつながっている)」。
「ひと昔前までは、誰が生産したのかが分かり、助け合いの時代でした。でも今は生産者と消費者の距離が遠くなり、ただ食べるだけの作業、お腹を満たすだけの機械的な食事になってしまっている。生産者の顔、想い、こだわりを発信することで、一口を大切に思ったり、食事の際の会話のきっかけになったり。そんな関係性でありたいんです」。
御結びの具材に使う食材は、すべて県内の生産者から。『TOMMY BEEF』の牛肉、『ナカシマファーム』のチーズ、『Qサバ』など、森さんが直接生産現場を訪ね、こだわりを聞き、想いに共感した生産者たちとのネットワークで成り立っている。
「以前からの知り合いもいれば、共通の知人の紹介も。生産者同士だからこそ分かる想いがあるんです」。
                                            
                                        
                                        
                                                                                    
                                                ■海苔は「別添え」。完結する食の物語
『SHIROISHIMORI』の御結びには、もう一つの特徴がある。有明海苔が別添えになっているのだ。
「初摘み海苔の醍醐味であるパリパリ感と風味を、しっかり味わってほしかったんです。そして、最後の仕上げはお客様自身で海苔を巻いて完成させてほしい。小さい子はご家族と一緒に。私たち生産者が育て、お店で握り、お客様が海苔を巻いて口に運ぶ。その一連の流れ全体が一つのストーリーなんです。生産から食べる瞬間まで、すべてが繋がって初めて完結する。そう考えているんです」。
【今回注文したメニュー】
・「平日限定ランチセット(しおの御結び・めんたいの御結び・豆乳坦々スープ)」 (税込700円)
・「季節限定 さんまの御結び 」(税込280円)                                            
                                        
                                                                                    スタッフの馬場さん
                                                ■これから広げていきたい「佐賀の恵みの輪」
「今後は、佐賀の恵みの発信の場として、生産とのつながりの輪をもっと広げていきたい。協力しながら佐賀の良さ、佐賀らしさを伝えていきたいですね」。
森さんの御結びには、白石の豊かな自然、生産者たちの想い、そして「食で人を幸せにしたい」という強い願いが込められている。一つの御結びから始まる物語。それは、生産者と消費者を繋ぎ、佐賀の食の未来を紡いでいく。
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■『SHIROISHIMORI (しろいしもり)』
 住所:佐賀県佐賀市松原1-3-15 徳久ビル1階
 電話:070-8415-4614
 営業時間:11:00〜16:00
 定休日:月曜(詳しくはInstagramを確認)
 Instagram:@shiroishimori
https://www.instagram.com/shiroishimori/
 HP:https://shiroishimori.com/
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■ SHIROISHIMORI
                                                                                    住所:佐賀県佐賀市松原1-3-15 徳久ビル1階
                                                                                                                                                                                                                                                                                            Instagram@shiroishimori
HP
                                                                            
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