授業プリントが卒業証書に!生徒主導で取り組むユニークなSDGs
2021年09月27日
[シリタカ!]
今、世界的に広がる「SDGs」(持続可能な開発目標)の取り組み。
福岡県立中間高校では、ある個性的な活動が生徒主導で行われている。
校内のごみ箱 100個→12個に
廊下に据えられたカラフルな箱。ポストに似ているが、こちらは不要になった古紙を回収するBOX。同校では使い終わった授業プリントなどを再生し、2021年度の卒業証書にしようと取り組んでいる。
中心となって動いているのは、県内でも珍しい「SDGs委員会」のみなさん。全クラスから代表生徒が参加し、主に校内のごみを減らす活動をしているという。生徒は「自分たちの授業で使ったプリントなどを(使って作るので)、最後卒業するときに受け取るものとして一番ふさわしいものだと思いました」と話す。
SDGs委員会では、校内のごみ箱を100個から12個に減らすことに成功。また月に1回「ゴミタイムズ」という新聞を発行。委員会の活動内容や、ごみ袋の使用枚数などを情報発信することで、生徒たちの意識を変えようとしている。
中間高校がこうしたSDGs活動に取り組み始めたのは2019年。前年に北九州市が全国初の「SDGs未来都市」に選定されたことがきっかけだったという。「在学生の8割以上が北九州市民なので、何かできないかと(始めた)。最初はごみ箱がなくて困るという声もありましたが、聞こえないふりをして(進めた)」と同校の水田大先生は当初の苦労を笑う。2年間で、全校のごみ削減に対する意識はとても高まった。例えば、昼食で出たごみは持参したごみ袋に詰め、各自持ち帰ることが“当たり前”になっているのだ。
世界初の製紙機
※乾式オフィス製紙機として世界初(2016 年 11 月時点、エプソン調べ。)
そんな意識改革を受けて、”古紙を使った卒業証書作り”へのチャレンジは始まった。ある日、サンプルを作成するため、九州ヒューマンメディア創造センター(北九州市)を訪れた生徒たち。エプソンが開発した乾式オフィス製紙機「PaperLab」を使うという。新しい紙や古紙を再生する際、今までは大量の水を必要としていたが、「PaperLab」は水をほとんど使わない※”世界初”の乾式製紙機。まさに”SDGs”なマシンなのだ。
※機器内の湿度を保つために少量の水を使用します。
エプソンは2020年から「KAMIKURU(カミクル)」プロジェクトと呼ばれる取り組みを実施しており、地域の自治体・企業・学校から発生する古紙を回収し新たな紙に再生して地域に還元するなど活動に取り組んでいる。
中間高校はこの「KAMIKURU(カミクル)」プロジェクトに賛同し、今回の” 古紙を使った卒業証書作り”がスタートした。
※「KAMIKURU(カミクル)」プロジェクトの詳細については、「カミクル」で検索ください。
持ってきた古紙を選別し、マシンにセット。スイッチを押すと、紙が吸い込まれていく。「給紙すると、紙を粉々にして線維状に分解します。この工程で機密文書も完全に抹消することができます」と説明してくれたのは、エプソン販売の髙田建二さん。
そして給紙からわずか8分※1、記念すべき1枚目が完成した。「すごい!めちゃきれい」「思ったよりしっかりしているし、きれいでツルツル」「斑点の箇所や色の濃さが違って、一枚一枚味がある」「もらったら率直にうれしい」と、生徒から口々に感動の声が上がった。ただし、3年生全員分の卒業証書200枚のためには、予備の作成も含めると最低でも7000枚※2の古紙を回収し、そこから紙の選別をする必要があるという。現状はほど遠いが「集めます!!」と決意も新たにした生徒たち。来年の卒業式では、個性溢れる卒業証書が3年生の門出を彩るだろう。
※1:A4サイズ(90g/m²)の場合は約3分で生産可能。
※2:卒業証書(A3大サイズの厚紙)作成には、約5枚の古紙(A4サイズ)を使います。