市民愛用のエコ暖房“ペレット”ストーブ 1台で1軒丸ごとポカポカに~ふるさとWish豊前市~
福岡県の東部に位置し、山と海に囲まれた自然豊かな豊前市。同町では今、「ちょっと他とは違う」暖房器具が人気だといいます。市内の多くの家庭で使用しているそうなので、まずはどれほど普及しているのか現地調査することに。
柔らかな炎に癒される豊前市民の冬
最初に訪問したのは、豊前市役所勤務の中西繁樹さん宅。木をふんだんに使った温もりあふれるステキな家は、なんと自身で設計を手掛けたというから驚きです。そんな中西家の土間にあったのは、炎がゆらぐ暖炉。しかし燃料は薪ではなく、ドッグフードのように見える小さなチップです。
中西さん曰く「ざっくり言うと、ギュッと圧縮した木」というそれは、「ペレット」と呼ばれる固形燃料。そして多くの豊前市民が愛用する暖房器具とはその「ペレット」を使用したストーブのこと。実際、「これ1台で家全体が暖まるんですよ」、「ゆらゆらと揺らめく火を見ているだけでも癒される」と、さまざまなご家庭でペレットストーブが活躍していました。
一般的にはあまり馴染みのないペレットストーブですが、その使い方はとてもシンプル。ストーブの後ろの燃料タンクにペレットをセットして、着火剤で火をつけるだけ。あとは自動的にペレットが火にくべられる仕組みになっているので、燃料を足すために火の具合を細かく確認する必要はありません。
ペレットストーブの多くは「輻射熱(ふくしゃねつ)」を放出し、空気中の水分や、人間の血液を温度上昇させ、身体の芯から優しく暖めてくれます。部屋が乾燥しづらい、煙やススがほとんど出ない、というのも大きな特長です。暖房器具として日本で知られるようになった歴史は浅いですが、北欧をはじめヨーロッパでは広く普及しており、先進的でオシャレなデザインがたくさん製造されています。
家を建てた後やマンションでも煙突を建てられれば設置可能で、費用も工事費込みで35万円くらいからできるといいます。ランニングコストも石油ストーブと同じくらいとあって、美しい炎が醸し出す「スローな雰囲気」にひかれ、コタツやエアコンなどの暖房器具から乗り換える人が増えているようです。
廃材から燃料へ!夢の挑戦
でも、どうして豊前市でこんなにペレットストーブが普及しているのでしょうか?その答えを教えてくれたのは、ペレットストーブの専門店「ペレスト福岡 夢飛港」オーナーの伊藤さん。「実は豊前市には福岡で唯一、ペレットを作っているところがあるんです」と教えてくれました。
豊前市でペレットを製造・販売しているのは「森の学校」。町の木材を有効活用しようと発足したNPO法人です。
「ペレットには、ヒノキが70%、スギが30%の割合で細かく砕いた木材を使用しています」と話すのは、理事長の舟橋慎一郎さん。ペレットは木材をベルトコンベアでチッパーに投入し、細かく粉砕したものをペレタイザーという圧縮機に投入して作ります。「森の学校」では、1日に400㎏~500㎏が製造されますが、それだけの量を作るとなると大量の木材が必要となるはず。その材料は一体、どうやって調達しているのでしょうか。
材料を集めに向かうスタッフに同行させてもらうと、市内の木工業者にたどり着きました。「森の学校」が作るペレットは、木工品の製造過程で、「節が多くて見栄えが悪い」という理由ではじかれた木の端材が材料。ほかにも木を削る際に出るおがくずも使用します。
「ペレットを作るために、新たに木を切ったり、購入したりするのではなく、いくつかの業者から回収した「不要な木材」をリサイクルしているのです。「加工製造の工程でどうしても捨てる部分というのは出てくるもの。でも最後の最後まで使えないかというのが、このペレットを作ろうと思ったきっかけです」と舟橋理事長はいいます。地元で育った“樹”が、そこに暮らす人々を暖める―。「森の学校」が作るペレットは、地産地消の「極み」ともいうべきバイオマス燃料なのです。
「だってこれ、ゴミですよ!お金払って捨てたゴミが燃料として活用できるなんて、すごいじゃないですか!」と舟橋理事長は小さなペレットを手に、間伐材や木造住宅の廃材など日本が抱える「ゴミ事情」を有効活用することで大きく花開く未来の展望を語ってくれました。
ますます寒さ厳しくなる今冬、ほのかな木の香りを放ちながら暖めてくれるペレットストーブで過ごすのもいいかもしれませんね。
■NPO法人森の学校
福岡県豊前市大字上川底858番地
TEL:0979-84-8155
https://morinogakkou.wixsite.com/morinogakkou/blank-5
■ペレスト福岡 夢飛港
福岡県 豊前市大字千束29-1
TEL:0979-64-9966
営業時間:9:00~17:00
※この記事は2019年の情報です(「シリタカ!」12月4日放送)。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。