「輝きの役割」(福岡県福岡市) 

「めっき」と聞いて、説明できる人は多くない。
「めっき」とは「金属などの素材に金属を被膜すること」で、銅板に金色を装飾することをイメージすると分かりやすいかもしれない。
九州電化の社長で、現代の名工でもある吉村浩司さんは「めっきは目には見えない場所で数多く使用されている」と話す。
例えば車や飛行機の部品、パソコンやスマホ、医療器具など活用されるジャンルは幅広い。

「めっき」の種類はひとつではない。状況や要望に応じて、新たな「めっき」を技術開発することも求められる。
めっき業界に入って37年の吉村さんも、その道のりは悪戦苦闘だったそうだ。
”美しい”ものが出来たとき、その苦労が報われると笑顔で話してくれた。

そんな吉村さんが未来に残したい風景は「箱崎漁港の船溜まり」だ。
箱崎で生まれ育った吉村さんは、小さいころから箱崎漁港で遊んでいて、大人に怒られるような遊びにも興じていたという。
今では足しげく通うことは無くなったが、車から箱崎漁港を目にするたびに、当時を懐かしく思うそうだ。

時代が変わり、福岡市の街並みは変わった。
箱崎も同じで、吉村さんが子どもの頃に見た景色は、ほとんどなくなってしまった。
しかし箱崎漁港の船溜まりだけは、あの頃のままだと感じるそうだ。
この日はとても寒く、波の音も冷たく感じるような天気だった。
海では鳥が小魚を探し、空の分厚い雲の合間には夕日が見え隠れしていた。
めっきの折り鶴が、その羽に箱崎漁港の夕景を乗せている。

※この記事は2023年の情報です(「STORY」1月8日放送)。

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