「一発勝負」(佐賀県佐賀市)
佐賀市の重要無形文化財である「肥前びーどろ」を110年以上前から作っている副島硝子工業。
その特徴のひとつが、金型を使わずに成型する「宙吹き」。その中でも「ジャッパン吹き」といわれる技術を扱えるのは、日本でも副島硝子工業の藤井さんだけだという。
「ジャッパン吹き」で代表的な作品は「肥前燗瓶」だ。藤井さんの記憶だと、昭和後期までは佐賀県の各家庭に1つはあったのではないのかというほど隆盛をきわめていた。
正月になると肥前燗瓶で日本酒を家族で注ぎ、話に盛り上がった思い出がある人も多いのではなかろうか。
そんな藤井さんが未来に残したい風景は、生まれ育った故郷「白石町から見る有明海」だ。
小さいころは祖父母や両親に連れられて「ガタスキー」で有明海を渡り、ムツゴロウなどをとって食べていたという。
藤井さんの祖父は、とってきた魚介類を肴に肥前燗瓶で日本酒を飲むのが好きだったようで、その姿を藤井さんは今でも鮮明に覚えているそうだ。
正月になると、旧友たちと有明海に上がる初日の出を見るために、堤防に集まるという。
メンバーは毎年変わらないそうで、焚き火で暖をとりながら、肥前燗瓶で冷えた体を温めるそうだ。
そういう景色がこれからもずっと残っていくように、職人を含めた地域の人たちがやるべきことは、まだたくさんあるのかもしれない。
※この記事は2023年の情報です(「STORY」3月5日放送)。