本場パリの技が光る！5日間の仕込みが生む至高のクロワッサン！朝倉のベーカリー「ORIGINE MONTMARTRE」（福岡・朝倉市）【まち歩き】

福岡県朝倉市の甘木本通り商店街に、まるでパリの街角から切り取ったような洗練されたベーカリーがあります。「ORIGINE MONTMARTRE（オリジーヌ モンマルトル）」。2022年8月にオープンしたこの店は、福岡県のパティスリーで5年間、本場フランスで6年間修業を積んだ店主・堀聡志さんが手がける、本格的なフランスのパンやお菓子が並ぶお店です。

■挫折から生まれた転機、パリで磨いた技術と情熱

堀さんの道のりは、パティシエを目指して製菓の専門学校に入学することから始まりました。卒業後は福岡の洋菓子店で5年間の修行を経て、さらなる成長を求めて本場フランス・パリへと向かいました。
しかし、パリでの最初の1年は厳しい現実が待っていました。「経験不足を痛感し、完全に挫折しました。自分には武器がないという危機感から、帰国も本気で考えました」と堀さんは当時を振り返ります。
そんな時、転機が訪れました。帰国前の思い出作りの感覚でパン職人の講習会を受講した際、参加していたお店の方から声をかけてもらい、パリのブーランジェリーでパティシエとして働くことになったのです。そしてパティシエの仕事をしながらパン部門でクロワッサンを任され、「これだ」と感じた堀さんは、毎日ひたすらクロワッサンを作り続けることを決意しました。
その情熱が実を結び、ついにはパリのコンクールで入賞を果たすまでになりました。

パリでの6年間は、堀さんの価値観を大きく変えました。「フランスのケーキ屋もパン屋も、とにかく大胆なんです。シンプルかつ味もおいしい、職人たちは周りを一切気にしない、作って焼いてすぐ出す。自分を貫いています」。この体験が、現在の店作りの根幹となっています。

■店名に込められた想いと豊富な商品ラインナップ

「ORIGINE MONTMARTRE」という店名には、堀さんの深い想いが込められています。「修行時代に住んでいたパリ18区『モンマルトル』、当時の経験が『出発点』という思いを込めたいとフランスで働いていた時のオーナーと一緒に考え、『オリジーヌ』と名づけました」。パリでの挫折と成長、そのすべてが現在の出発点となっているという、堀さんの人生観が表れた店名です。
商品ラインナップは、看板商品のクロワッサンとバゲットを中心に、朝倉の食材を使用した総菜パン、そしてパティシエとしての技術を生かしたカヌレなどの焼き菓子まで幅広く展開しています。地元の素材を生かしながらも、フランスで培った技術を存分に発揮した商品構成となっています。

■5日間の仕込みが生む、至高のクロワッサン

現在の看板商品であるクロワッサンには、パリで学んだ技術が余すところなく注ぎ込まれています。「5日間の仕込みに一番時間がかかります。他にはないオリジナルの熟成方法で、バターとミルクの味がしっかりしたクロワッサンになるんです」。
堀さんは続けます。「パン職人ではなくパティシエという意識で仕事に向かっているので、商品が並んだ時のキラキラした彩りや見た目も心がけています。パンが『食べてくれ』と主張しているような、そんなパンを作りたいんです」。
飽くなき探究心で今日よりも明日と毎日改良を続けている堀さん。その姿勢が、常に進化し続ける商品として表れています。


■朝倉への深い愛情

なぜ都市部ではなく、故郷の朝倉で開業したのでしょうか。堀さんの答えは明快でした。「専門学校に入った時から、お店をしたいと思っていました。でも地元しか知らないし、楽しく育ったので朝倉以外は考えませんでした」。
フランスでの修業を経て、その想いはさらに強くなりました。「フランスに行って、より朝倉でやろうと思いました。フランス現地のお菓子やパンのあまりの美味しさに感動したんです。これを自分が作れるようになって、朝倉の人に食べてもらいたい。『街に出なくても、朝倉でおいしいパンが食べられる』と朝倉の人から言ってもらえるようなお店になりたいと思いました。

堀さんにとって朝倉の魅力は、「ほどよい田舎さ」にもあります。「ちょっとした不便さもありながら心地よいところが幸福度を上げている、縛られないんです」という言葉からは、都市部にはない朝倉ならではの豊かさを感じ取ることができます。
現在の場所については「商店街でここしか空いてなかった、タイミングが良かった」と謙遜しますが、リピーターの多さが店の魅力を物語っています。「常連さんが多くて、昼食、おやつ、お土産とさまざまな用途でご利用いただいています。土曜日は福岡市内や県外など遠方から来てくださる方も多いですね」。


■独自性を追求する未来への挑戦

パティシエ出身という経歴を持つ堀さんは、今後の展開についても独特の視点を持っています。「もっとうちにしかないユニークなパンを作っていきたい。ラインナップがいつも変わるんです、今自分が作りたいものを作っているから」。
意外なことに、「日本のパン屋で働いたことがないので、正直あんパンなど日本発祥のパンの作り方がわからない」と笑う堀さん。この「知らない」ことが、かえって独創性の源となっているのかもしれません。
「まずは朝倉の人に知ってもらいたい。ラインナップを変えたり、お菓子を充実させて、うちに来たらなんでも揃う、コンビニ感覚で気軽に寄れるお店を目指したいです」。

■地域とともに歩む店づくり
堀さんが目指すのは、単なるパン屋を超えた存在です。「名前が広がっていけば地元を自慢できる。朝倉といえば老舗のお店が多い印象だが、天神に行かなくても地元の人が美味しいパンを買いに来れる場所でありたい」。
何より印象的なのは、お客様への感謝の気持ちです。「本当にお客さんに支えてもらっている、常連さんが多いんです。発酵に4時間かかるので、売り切れたら終了なのですが、パンが売り切れてしまっても『今度は早く来るね』と笑顔でおっしゃってくれて」。
朝倉の人々の温かさと、本場フランスで磨いた技術。この二つが融合した「ORIGINE MONTMARTRE」は、地域に根ざしながらも世界レベルの品質を提供する、新しいタイプのベーカリーとして歩み続けています。

________________________________________


■ORIGINE MONTMARTRE（オリジーヌ モンマルトル）
住所：福岡県朝倉市甘木1067-1
電話：0946-55-0362
営業時間：10:00～15:00（商品なくなり次第終了）
定休日：月・火曜（日曜不定休）
Instagram：@origine_montmartre
https://www.instagram.com/origine_montmartre/