

2025年2月、福岡県糟屋郡須恵町にオープンした『Pain・de・Lapage(パン・ド・ラパージュ)』。オーナーの山口啓太さんに、開業への想いや地域への貢献について話を聞いた。
■「パンの歴史の1ページに残りたい」店名に込めた想い
「パン・ド・ラパージュというのは、パンの歴史という意味なんです。パンの歴史の1ページに残ってほしいなという思いで命名しました」と山口さん。須恵町でのご縁があって開業したこの店は、須恵町では希少なパン屋だ。
「須恵町にはパン屋がほとんどなかったんです。地域の皆さんからすごく感謝していただいているので、須恵町の歴史の1ページに残ってほしいなという思いもあります」。
■数ある候補地から須恵町を選んだ理由
山口さんは当初、那珂川や太宰府など様々な場所を検討していた。しかし須恵町を選んだのには明確な理由があった。
「市場調査をした結果、まず須恵町にパン屋が少ないということ、そして以前うどん屋だった物件の大家さんがタイミングよく『パン屋を出してほしい』と声をかけてくださったこと。役場の方々も温かく迎えてくれて、お客さんからも『出してほしい、買いに行くから』と言っていただけたんです。ご縁とタイミング、融資、すべてが重なった結果でした」。
■地域密着で目指す須恵町の活性化
地域貢献への想いは強い。「地域に密着したパン屋になりたい」と語る山口さんは、イベントや店舗で独自に行う夏祭りなどを通じて須恵町全体を盛り上げたいと考えている。
特に大切にしているのは接客だ。「お客様あってのお店だと思っているので、スタッフ教育にはすごく力を入れています。また商品に飽きが来ないように、春夏秋冬で季節に合った商品に変えたり、土日や夏祭り限定で7〜8種類の商品を2日間限定で提供したりしています」。

■パン職人としての歩みと店舗デザイン
山口さんのパン作りの原点は、福岡市東区照葉の「パン・ド・クルール」での修業、その後鳥栖の「クリーブラッツ」での経験にある。しかし独立資金がなかったため、一時的に建築業界に転身。そこで得た設計やデザインの経験が、現在の店舗デザインに活かされている。
「建築で設計やデザインを学んだことで、お金を貯めつつパン屋をするためのイメージを膨らませることができました。この店のデザインも全部私が考えたんです」。
■60種類以上の豊富な商品ラインナップ
現在店頭には60種類以上の商品が並ぶ。パンだけでなく、モンブランやカヌレといったケーキ寄りの商品も充実している。
「須恵町で市場調査をしていく中で、甘いタイプが皆さんお好きなようで、デニッシュやタルトなどスイーツにも力を入れています」。
■人気No.1「太陽のクリームパン」へのこだわり
一番人気の「太陽のクリームパン」(税込168円)には、長崎県産の「太陽卵」の卵黄のみを使用している。
「いろんな卵を食べ比べした中で、一番ビビッときたのがこれでした。すごくコクがあって、まろやかなんです」。

■須恵町ブランド「須恵ドック」への想い
店の看板商品の一つが、須恵町のブランドパンとして開発した「須恵ドック(税込540円)」だ。
「須恵町にせっかく出させていただいているので、須恵町のブランドのパンを一つ出したいと思って開発しました。キャベツがたっぷり入り、チョリソーが丸ごと端から端まで入っています。3種類のオリジナルソース(ピクルス、オニオンなど)と厳選したモッツァレラチーズをたっぷり使用していて、パンに食材を合わせるのではなく、食材に合わせて独自配合で作ったパンです」。
一つでお腹いっぱいになるほどのボリュームで、1日数量限定での提供。午前中には売り切れるほどの人気商品だ。
■「三立て」を重視した商品作り
山口さんが最も重視するのは「焼きたて、揚げたて、作りたて」の「三立て」だ。
「わざわざ県外からも、近隣からも来ていただくお客様に、なるべく焼きたてで温かいものを食べていただきたい。そのためにスピード感や工程管理、読みに工夫を凝らしています」。

■お客様と一緒に作る店づくり
他店との差別化について山口さんは「福岡はパンのレベルが高く、美味しいのは当たり前。その上でどうお客さんに来ていただけるかが勝負」と語る。
特に力を入れているのが、公式アプリを通じたお客様との対話だ。「お客様と一緒にお店を作っているという感じです。アプリでどういったパンを出してほしいかアンケートを取って、それを反映した商品を出すことが本当に多いんです」。
クリームチーズと8種類のドライフルーツを入れたパンや、3〜4種類の夏野菜を使ったフォカッチャ(税込346円)など、お客様の要望を取り入れながら自身のアイデアを落とし込んでいる。
■「パンドラ」で須恵町の新名物を
今後挑戦したい商品として、店名の略称である「パンドラ」を冠したどら焼きの開発を明かしてくれた。
「パン・ド・ラパージュを略して『パンドラ』なので、パンドラというどら焼きを出したいんです。お持ち帰り専用での販売を考えています。これがふるさと納税の返礼品になったりして、須恵町の新たな名物になってくれればと思っています」。
役場からもふるさと納税の返礼品として声がかかっており、地域貢献にも繋がるにも前向きに取り組んでいる。
■地域との深いつながりを実感
来店者の6〜7割が須恵町や宇美町など近隣住民だ。お客様との関係性について山口さんは「すごく温かい」と語る。
「お客さんとはフレンドリーな関係を築いています。『他店に行ったけど、やっぱりこっちの方が美味しかった』と戻ってきてくれるお客様もいらっしゃいます。私が体調を崩して店を閉めてしまった際には、お客様から体調を気遣う温かい言葉をかけていただいて、地域との深いつながりを感じました」。
■朝8時からの早朝営業の理由
朝8時からの営業について「市場調査の結果、役場や病院が近く、朝活発な町であることがわかりました。朝食需要に応えるため8時開店にしています」と語る山口さん。地域の生活リズムに合わせた営業時間設定も、地域密着への想いの表れだ。

■5年後、10年後のビジョン
「須恵町でパン屋といえばパン・ド・ラパージュと言っていただけるようになりたい」と山口さん。さらに「須恵町全体がもっと盛り上がっていけばいいな」と地域全体の発展も願っている。
今後はマルシェや地域イベントへの積極的な参加も予定している。「開店当初は土日を中心に非常に混雑していて、地域イベントに力を入れる余裕がありませんでした。最近はやっと店舗が順調に軌道に乗りはじめてきたので、地域貢献に繋がるイベントには意欲的に参加していきたいです」。
須恵町の歴史の1ページに刻まれていく『パン・ド・ラパージュ』。山口さんの地域への愛情と、お客様との温かいつながりが、このパン屋の一番の魅力なのかもしれない。
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■『Pain・de・Lapage(パン・ド・ラパージュ)』
住所:福岡県糟屋郡須恵町須恵775-3
電話:092-284-6988
営業時間:8:00〜17:00(商品が無くなり次第終了)
定休日:月・木曜
Instagram:@pain_de_lapage
https://www.instagram.com/pain_de_lapage/
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