
オーダー後に作るグラスタルトが話題!フルーツの里で紡ぐ"出来立ての美学"タルト専門店『NOYU』が追求する「レストランデザートをカフェで」という挑戦(福岡・筑前町)【まち歩き】

福岡県朝倉郡筑前町。フルーツの産地として知られるこの地で、一軒のタルト専門店が独自の道を歩んでいる。2019年に福岡市桜坂から移転した『NOYU(ノユ)』のオーナーシェフ野村純さんが語る、移転後6年間の挑戦と進化の物語。
■移転の決断 ー 桜坂から筑前町へ
「ちょうど桜坂の建物が古くなって退去しなければいけなかったんです。妻が朝倉出身で、筑前町はフルーツ中心の提供にも適した環境だと思って。さまざまなタイミングや縁が重なりました」と野村さんが振り返る2019年の移転。10年間福岡市内で愛され続けたタルト専門店の、新天地での再出発だった。
筑前町という立地を活かした地産地消への取り組みについて、「なるべく地元のものは優先的に使います。ただ極端にはこだわっていません。あくまで『お客さんに美味しいものを提供すること』が第一です」。
桃は岡山から仕入れ、アメリカンチェリーも使う。「地元のフルーツだけだと提供できるタルトの種類が少なくなってしまう」という判断の背景には、顧客満足を最優先に考える姿勢がある。

■形状革命 ー 丸から四角へ
移転後最も大きな変化は、タルトの形状を丸から四角に変更したことだ。「テイクアウトのお客さんが持ち帰るまでにざらに1時間以上かかる。前の丸い形だと盛り付けが崩れてしまう」。
平日は店内飲食とテイクアウトが半々、週末はテイクアウトが増加する現実に対応した設計変更。四角形により箱への収まりと安定性を確保した。
「ベースのタルト生地は昔と全く変わらないけど、中のフィリングは結構軽くしました」。顧客の声を聞きながら、自分のこだわりの範囲内でのアップデートを続けている。

■グラスタルト ー パフェではない「タルトの進化系」
店内で目を引くグラスに入ったデザート。これを「パフェ」と呼ぶ方が多いが、野村さんは「グラスタルト」と名付けている。
今回注文したのは「グラスタルト・シャインマスカットと梨」(税込990円)。
「中にタルト生地をおよそ一つ分仕込んでいます。どうしてもタルトだと上の部分だけ先に食べてしまう人が多いですが、作り手としては上の盛り付けから下の生地にかけての縦のバランスで味を作っています。全部一緒に食べてこそ、タルトの美味しさを感じていただける」。
グラスという形状により、タルト生地も一緒にすくって味わう仕組みを作った。これは10年前から構想していたアイデアの具現化だった。
■レストラン出身の強み ー 型に囚われない発想
野村さんの経歴は異色だ。イタリアンレストランのシェフ・カフェダイニングでの経験を経て、スイーツの世界へ。「製菓学校にも通ってませんし、ケーキ屋での勤務経験もありません。ですが、自分だからこそできるアイデアや表現があります」。
この背景が独自のアプローチを生んでいる。「タルト生地を1枚のお皿だと思っています。そのお皿の上にデザートを盛り付けていく感覚です」。
一般的なケーキ屋の「固めてカット」する文化から脱却し、カット済みのタルト生地に都度盛り付ける方式を採用。「1個1個盛り付けるのは大変ですが、そこにしかない良さがあります」。

■出来立て提供への挑戦
現在野村さんが最も力を入れているのが「出来立て提供」だ。最近提供を始めたタルトのクレープ仕立ては、オーダー後にタルトやアイス・ソースを合わせる皿盛りスタイルで提供。前述のグラスタルトもオーダーが入ってから盛り付けを行って提供している。
「レストランで提供していた時の感覚ですね。焼き上がったものをその場で盛り付けて出す。最終的にはそこを目指しています」。
ただし、カフェという業態の制約もある。「レストランと違い、カフェのお客さまは提供時間も大事ですし、価格にも敏感。この店舗でのベストな状態に近づけたい」。
■10年先を見据えた理想
「その日入荷した最高の食材で、一番味わっていただきたい美味しいものを表現したい」と野村さんは語る。常連客の好みに合わせたカスタム提供も。
「東京にも同様の感覚の店はあるが、フルコース級の高価格。もっと多くの人に気軽な価格で体験してもらいたい」。
将来的には別の場所でのレストラン的提供も視野に入れながら、現店舗でも少しずつ理想の浸透を図っている。「死ぬまで追い続ける」という言葉からは、妥協のない姿勢が伝わってくる。

■今後の展望
インスタ映えという言葉が生まれる前から、直径7.5㎝のタルトのお皿に高さ25㎝以上のあまおうを「オニモリ」するあまおうタワータルトの提供を続けている。
「流行り廃りは一瞬で終わる。流行を追いかけるのではなく、自分が大切にしている信念をずっと体現していきたい」。
グラスタルト、タルトのクレープ仕立て、ベイクドチーズタルト、究極の生チョコタルトなど、他にない『NOYU』独自の組み合わせの商品開発も継続。
「どこにでもありそうな商品でも、うちでしか食べられない味に落とし込んでいきます」。
筑前町という豊かな自然環境の中で、野村さんは「レストランの非日常的体験を気軽なカフェ価格で」という理想を追求し続けている。移転から6年、進化を続ける『NOYU』の挑戦は、これからも続いていく。
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■『NOYU』
住所:福岡県朝倉郡筑前町畑島477-2
電話:0946-42-3330
営業時間:10:30~18:00(状況により早期閉店あり)
定休日:水曜、第1・3火曜
Instagram:@noyu_jun
https://www.instagram.com/noyu_jun
■ NOYU
住所:福岡県朝倉郡筑前町畑嶋477-2
電話番号:0946-42-3330
営業時間:10:30~18:00(状況により早期閉店あり)
定休日:水曜 第1・3火曜
Instagram@noyu_jun
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