月曜が待ち遠しい―。週に一度、4時間だけ開くアシェットデセール店『Lundé』 福岡・大野城市の隠れ家で味わう至福の一皿【ニューオープン】

福岡県大野城市の静かな住宅街。通りから少し奥まったところに、その小さなお店はあります。

白くてかわいらしい小屋の前に、『Lundé』(ランデ)と書かれた青い看板。中に入ると、オープンキッチンにカウンター席が3つ。「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」と、店主でパティシエのまゆみさんが朗らかな笑顔で迎えてくれました。

ここは、目の前でパティシエがデザートを仕上げてくれる「アシェットデセール」の専門店。「アシェットデセール」は持ち帰りのケーキとは違い、時間の経過による崩れや温度変化を気にする必要がありません。そのため、パティシエは自身のアイデアを存分に一皿に詰め込むことができます。

冷たいアイスクリームや、できたての香ばしい焼き菓子、そして全体をまとめ上げる彩り豊かなソース。これらを自在に組み合わせながら、口に入れた瞬間の温度や食感、鼻に抜ける香りまでを完璧に計算して作り上げる「究極の一皿」。パティシエがこだわり抜いた「そのとき、一番おいしいデザート」をダイレクトに楽しめるのが、このスタイルの最大の魅力です。

『Lundé』のメニューは現在3種。取材日(2025年12月)は『苺(いちご)のパフェ』『バニラチーズケーキと季節のアイス』『リンゴのタルト』が並んでいました。

『苺のパフェ』(1300円)には2種類のイチゴを使用。
構成は上から、イチゴのメレンゲ/ラズベリーのフィアンティーヌ/豆乳のミルクパンナコッタ/イチゴクリームチーズアイス/大豆ストロベリーショコラ/ボルボルンのクランブル/イチゴジュレ/橙(だいだい)のジュレ/フロマージュブランクリーム/ゴロッと果肉感を残したイチゴソース。

目の前で次々と積み上がっていくパーツたち。その複雑な構成に圧倒されていると「自分でも、あれ、いま何種類入れたっけ?と分からなくなるんです」と、まゆみさんが茶目っ気たっぷりに笑います。わずか2畳ほどのキッチンは、彼女にとっての「実験室」。試作を重ね、「食感にアクセントが欲しい」「もう少し酸味を」と微調整を繰り返しながら、何時間もこもって理想の調和を追求します。

パフェは、エディブルフラワーとイチゴ、最後にメレンゲをふわりと乗せてでき上がりました。「一番上のメレンゲとフィアンティーヌを、崩しながら召し上がってください」。その言葉通りにスプーンを入れると、鮮やかなフランボワーズ色の生地がパリンと弾けます。ひとさじ目はパンナコッタとアイスを添えて、次はイチゴと大豆、その次は……。食べるたびに新しい表情が現れる楽しさに、気づけばグラスは空っぽに。最後の一口を終えるころには、心もお腹もすっかり満たされていました。

■フランス修業では挫折も経験
福岡県飯塚市出身のまゆみさんは、製菓専門学校を卒業後、ホテルやパティスリーで腕を磨いてきました。さらなる高みを目指して渡ったフランスでは、憧れのパティシエのもとで働くチャンスをつかみます。しかし、そこで待っていたのは大きな挫折でした。「周りとのあまりのレベルの違いに、心が折れてしまって……」。しかし、失意の中で帰国しても、お菓子の道を諦めることはありませんでした。現場でさらに経験を重ねるうちに芽生えたのは「お客様の反応を間近で見たい、話してみたい」という強い想い。そんな時、同僚から「場所が空いているからお店をしてみない?」と声を掛けられたことが、開店のきっかけとなりました。

■2025年9月、新しい物語の始まり
こうして2025年9月に産声をあげた『Lundé』。お客は1人または2人で訪れる女性が中心。中には1人で2皿をペロリと平らげていく人もいるそうですが、その気持ちは、一皿を味わえばすぐに理解できます。

看板メニューの『バニラチーズケーキと季節のアイス』(900円)は、3種のチーズを絶妙にブレンド。 「バスクでもベイクドでもレアでもない、“Lundé”のチーズケーキを目指しました」と語る通り、まったりとした濃厚さがありながら、驚くほど軽やかに消えていく口溶けは、これまでにない新食感です。

取材日に添えられていたのは、カボチャのアイスクリームとフランボワーズのクッキー、そしてカボチャのキャラメリゼ。キャラメリゼの深みのあるコクと香りに、フランボワーズの鮮やかな酸味がアクセントとなり、最後の一口まで発見がある、重層的な味わいに仕上がっています。

一方、『リンゴのタルト』(900円)は、一見タルトタタンのようですが、それとは一線を画すスタイル。 あえてタルト部分のみを先に焼き上げ、その上にリンゴのシャキシャキとした食感を活かしたコンポートをオン。キャラメルソースとバニラクリームが、フレッシュなリンゴの風味を優しく引き立てます。

■奇をてらわず、素材をストレートに
どのデセールにも共通しているのは、「多彩な食感」と「ひとさじごとの変化」です。
「おいしいと思っていただけることを一番大切にしています。奇をてらいすぎず、素材の良さをストレートに伝えたい。苦手な方がいらっしゃるような複雑すぎる組み合わせは避け、誰もが『ああ、おいしい』と素直に思える一皿を心がけています」

パティシエとしての挑戦心と、おもてなしの心。その両方を併せ持つまゆみさんが選ぶ飲み物もまた、格別です。九州各地のお茶屋さんを自ら巡って厳選した緑茶や玉露、ハーブティー、ほうじ茶、そしてこだわりのコーヒーや抹茶ラテ。一つひとつのデセールに寄り添う一杯が用意されています。

■月曜日が待ち遠しくなる場所

今後はさらに福岡に密着し、信頼する農家さんのこだわりを伝えていけるような店にしていきたいと、まゆみさんは微笑みます。

「小さなお店ですが、デザートとお茶をゆっくり楽しみにいらしてください」

店名の『Lundé』は、フランス語で月曜日を意味する「Lundi」をもじった造語。 憂鬱になりがちな週の始まりが、「あのお店があるじゃない」と楽しみに変わる-そんな温かな光が灯る場所として在り続けてくれることを願ってやみません。


『Lundé』
福岡県大野城市某所
次回営業日は2026年1月12日(月)~
お店の詳細・予約は下記インスタグラムから。
https://www.instagram.com/lunde_sweets_shop/

■ 外部リンク

Lundé

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