【3/29かすやパンマルシェ】「宝石箱」への憧れが、20年越しに実った。『パンのマグ』が届ける、小さな幸せの物語(福岡・粕屋町)【まち歩き】

福岡県糟屋郡粕屋町の住宅街に、コック帽をかぶった食パンの看板が揺れるパン屋がある。店の名は『パンのマグ』。扉を開けると、焼きたてのパンの香りがふわりと広がり、木目調の明るい店内に色とりどりのパンが並ぶ。その光景は、オーナーが幼い頃に憧れた「宝石箱のようなパン屋」と重なる。

■会計事務所からパン職人へ。20年以上の修行が生んだ一軒

オーナーの丸山公千さんがパン屋への憧れを抱いたのは、小学校に上がる前のこと。自宅近くにあったパン屋が「宝石箱のようにキラキラした場所」として記憶に刻まれ、その光景はずっと胸の奥に残り続けた。

大学で経営学と会計を学んだ丸山さんは、卒業後いったん会計事務所へ就職。パン作りはあくまでも趣味として続けるつもりだった。しかし作れば作るほど、仕事にしたいという気持ちが膨らんでいった。

「やっぱりパン屋をしたいな、という思いがひとつだけあって」。

決意を固めた丸山さんは会計事務所を辞め、パン屋でアルバイトから修行をスタート。4〜5か所を転々としながら腕を磨き、パン専門学校の講師を務めるまでに至った。修行期間は実に20年以上。周囲からの反対の声もあったが、それでも自分のやりたい道を進み続け、2018年頃についに「パンのマグ」をオープンした。
■「マグカップに収まるくらいの幸せ」を、毎日のパンに込めて
店名の「マグ」は、マグカップに収まるくらいの幸せ、という意味が込められている。コーヒーを一杯飲むときのような、日常のなかにあるゆったりとした時間。その小さな幸せをパンで届けたい、という丸山さんの思いが店のコンセプトになっている。

「家族で経営できるような小さいパン屋っていうのは、最初から頭にありました」。
大きなチェーン店ではなく、顔の見える小さな一軒。その姿勢が「小さな幸せ」というコンセプトと地続きになっている。

奥さんとの出会いもパンがきっかけだった。明太フランスを全国に広めたことで知られる東区の名店「フルフル」で共に働いていたふたりは、パンを通じて歩み寄った。

■一晩かけて、小麦の甘さを引き出す

丸山さんのこだわりは、製法に宿っている。フランスパンや食パンには「オーバーナイト製法」を採用。前日に仕込んだ生地を冷蔵庫で一晩じっくりと寝かせ、翌朝焼き上げる。

最大のポイントは、イースト菌の量を通常の約6分の1まで抑えること。

「イースト菌は生地の中の糖分を食べてどんどん増えていくんです。少なくすることで、失われる糖分も少なくなる。焼き上がったパンに、小麦本来の甘さが残るんです」。

手間と時間はかかる。それでも妥協しないのは、素材への真摯な向き合い方があってこそだ。高価な特別素材に頼るのではなく、手に入りやすい一般的な材料を使いながら、技術で美味しさを引き出す。シンプルだが、簡単ではないこだわりだ。


■安くしてもらったら困る。地域に愛されるパン屋の日常

店の客層は、近所に住む地元の方が中心。店の裏手には保育園があり、お迎え帰りのママさんたちが立ち寄る姿も日常の光景だ。店内に飾られたパンのイラストも、その保育園の子どもが描いてくれたものだという。

「自分が小さい頃にパン屋に来て、パン屋になりたいと思った。それが未来の子どもたちに伝わっていくと嬉しいですね」。

丸山さんが語るエピソードには、お客さんとの距離の近さがにじみ出ている。LINE公式アカウントで毎月クーポンを発行しているが、長年通い続ける常連さんに限って、それを使わないという。

「なんで使わないんですかって聞いたら、『安くして潰れてもらったら困るから』と言われたんです」。

さらに、近所に住む女性のお客さんは、雨の日になると必ずまとめ買いをしにやってくる。理由を尋ねると「雨の日は売れ残るだろうから、少しでも役に立てたら」と。

「本当に、感謝しかないです。地域の方々に可愛がってもらっています」。

■コロナ禍の小麦不足が生んだ、もうひとつのサービス

パンのマグには、パンのほかにもうひとつのこだわりがある。店で使っている高級パン用強力粉「スーパークラウン」を、お客さんに販売しているのだ。

きっかけはコロナ禍だった。物価高騰と品薄が重なり、スーパーでも小麦が手に入りにくくなっていたあの頃、パン教室の先生たちが材料の調達に困っているという話を耳にした。

「じゃあ、うちで売っちゃえと思って。自分がめちゃくちゃ気に入っている粉を、みなさんにも使ってもらえたら」。

パン作りを楽しむ人たちの困りごとを、自分にできる形で解決したかった。丸山さんのそんな気持ちが、今もこのサービスに息づいている。


■あの宝石箱は、次の世代へ

小学校に上がる前、近所のパン屋が「宝石箱」に見えた。その記憶が、20年以上の修行を経て一軒のパン屋になった。

今、その店の裏手には保育園がある。お迎え帰りの子どもたちが店に入り、色とりどりのパンを目にする。丸山さんが幼い頃に感じたあの輝きが、また誰かの胸に刻まれているかもしれない。

「パン屋になりたい」と思う子どもが、いつかこの町から生まれる。パンのマグが届ける小さな幸せは、そうやって静かに、次の世代へとつながっていく。

■イベント情報|かすやとさくらのパンマルシェ

『パンのマグ』が出店します!

桜満開の駕与丁公園に、町内外から約20店舗のパン屋さんが大集合する「かすやとさくらのパンマルシェ」。おいしいパンはもちろん、楽しいステージや親子で楽しめるワークショップなど、内容盛りだくさんのイベントです。

こういったイベント出店はほとんど初めてという丸山さん。
当日イチオシは、玉ねぎを3時間じっくり炒めたパテが絶品の「手ごねチーズバーガー」。
パンもパティもすべて自家製。ふわふわに焼き上げたパンで、3時間じっくり炒めたオニオンソテー入りのパティを挟んだ。甘みと旨みが重なり合う、やさしく深い味わい。

めんたいフランスは、長時間発酵で小麦の甘みを限界まで引き出したフランスパンに、配合から考え抜いた自家製メンタイバターを合わせた。しっかりとした噛み応えがありながら、口の中でするりと溶けていく食感。

メロンパンは、外側さっくり、中は驚くほどふんわり軽い食感。クッキー生地も配合からすべて自家製で、甘さは控えめ、香りは豊か。最後のひと口まで飽きずに食べられる、パン屋ならではのバランス。

ぜひこの機会に味わいに来てください。

当日の出品予定商品(一部):
・手ごねチーズバーガー
・メロンパン
・パンオショコラ
・うす皮あんもちパン
・ウインナーロール
・めんたいフランス
・いちごのクリームパン
・フィッシュコッペ
・カレーパン
・大人の柚子こしょうチーズフランス
※内容は変更になる場合があります。

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■『かすやとさくらのパンマルシェ』
日時:2026年3月29日(日)10:00〜16:00
会場:駕与丁公園・粕屋町総合体育館かすやドーム(福岡県糟屋郡粕屋町駕与丁3-2-1)
アクセス:JR長者原駅から徒歩10分
詳細:粕屋町シティプロモーション
Instagram:@kasuya_citypromotion
https://www.instagram.com/kasuya_citypromotion/
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■『パンのマグ』
住所:福岡県糟屋郡粕屋町大字仲原1775-5
電話番号:092-624-0015
営業時間:10:00〜19:00(日曜18:00CLOSE)
定休日:月曜 ・第2日曜
Instagram:@pan.no.mug
https://www.instagram.com/pan.no.mug/
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■ パンのマグ

住所:福岡県糟屋郡粕屋町仲原1775-5
Instagram:@pan.no.mug

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