適応障害
2019年06月22日
[過去の放送内容]
■概要
仕事や生活上のストレスが原因で心身に不調が起こるのが適応障害です。
患者本人がとても苦しんでいるにも関わらず、「やる気がない」などと周囲から誤解を受けやすい特徴があります。
患者の4割以上が5年後には うつ病と診断されているという報告もあります。
今回、適応障害についてお話を伺ったのは、九州中央病院 メンタルヘルスセンター長の十川 博(そがわ ひろし)先生です。
■適応障害
適応障害は「環境に適応できない弱い人」というイメージがあるかもしれませんが決してそうではなく、また誰でもなり得る病気です。
ストレスがあって、それによって情緒面や行動面でいろいろな症状が出て、日常生活や社会生活に大きな支障が出る状態とされています。
ストレスが発生すると割合早く症状が出ますが、そのストレスが消えてなくなると症状も軽くなるという特徴があります。
■ストレス
適応障害の原因となるストレスは人によってさまざまで、他人には平気なことでも本人にはストレスとなって発症につながることがあります。
また人間関係や不馴れな仕事、失恋や離婚などといった嫌な出来事だけでなく、
出世や結婚など嬉しい出来事でもそれがストレスとなって適応障害を発症することもあります。
■適応障害の症状
適応障害では気持ちの落ち込み・イライラ・不安・訳もなく涙が出るなどの情緒面の症状や、動悸や倦怠感・不眠などの身体面の症状が出ます。
仕事の能率が悪くなる、ミスをしがちになる、そして職場に出てこなくなるといった行動面での支障も出てきます。
よく似た病気にうつ病がありますが、うつ病は適応障害とは違い、気分の落ち込みがほとんど1日中続きます。
また うつ病はストレスがなくなっても症状は続きます。
■適応障害の治療
適応障害は精神疾患の中でも比較的治りやすい病気とされています。
治療はまず、ストレスの原因を遠ざける環境調整から始めます。
職場に馴染めないようなら部署を異動したり転職したりして環境を変えると劇的に治ることがあります。
ただし環境調整だけでは十分な効果が得られない場合や患者本人の将来や生活のために環境を変えられない場合は、
ストレスを対処するための治療が必要になります。
広く行われているのが認知行動療法で、ストレスに対する受け止め方や行動パターンを自覚して、
それを変えることでストレスへの適応力を高めて適応障害を改善します。
■先生より
私が治療で最も大切にしているのは患者さんの話をしっかりと「聞く」ことです。
患者さんの言葉に耳を傾けて信頼関係を築いて、そのもとに治療を進めていくのが1番大切ではないかと思います。
「職場に申し訳ないので辞める」と言う患者さんもいますが、その場で判断してしまうと後で後悔することが割合あるので、
今はその判断をするのはやめて、もうちょっと落ち着いてから考えていきましょうねと伝えています。