糖尿病性腎臓病
2023年01月28日
[過去の放送内容]
今回、糖尿病性腎臓病についてお話を伺ったのは、
福岡赤十字病院 腎臓内科 部長の、
德本正憲 (とくもと まさのり)先生です。
■糖尿病性腎臓病とは
糖尿病性腎臓病とは、糖尿病が原因となって腎臓の働きが悪くなる病気です。
透析をしている患者さんのおよそ4割は、糖尿病性腎臓病が原因とされています。
糖尿病の国内の患者数はおよそ1000万人と言われ、
その3大合併症が糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎臓病です。
そして糖尿病患者のうち、
およそ4割が糖尿病性腎臓病を合併していると言われています。
■糖尿病性腎臓病の症状
糖尿病性腎臓病はゆっくりと悪くなるので、
初期ではほとんど自覚症状はありません。
しかし、足にむくみが出てきた、夜間のおしっこの回数が1回程度だったのが
2~3回と行くようになったという状態になれば、
少し腎臓が悪くなったと考えていいかもしれません。
■メカニズム
腎臓には、細い毛細血管が丸まってできた、
糸球体(しきゅうたい)という組織があります。
糸球体は腎臓内に流れてきた血液中の老廃物をろ過して、尿のもとを作ります。
一方、糸球体によってろ過され、きれいになった血液は体の中に戻されます。
しかし、糖尿病で血糖が高い状態が続くと、全身の血管が傷つきます。
すると毛細血管の塊である糸球体は、ろ過装置としての機能が弱まっていきます。
その結果、体にとって必要な たんぱくが尿として漏れ出てしまいます。
■“新しい” 糖尿病性腎臓病
糖尿病性腎臓病では、検査でたんぱく尿の有無を調べることが大事ですが、
最近、高齢者を中心に、尿検査だけでは見つけにくい
糖尿病性腎臓病があることが分かってきました。
高齢になると、一般に病気がなくても動脈硬化が進みます。
そこに糖尿病があると動脈硬化が進みやすくなって、
腎臓内の血管よりも、もっと太い血管に動脈硬化が起こって、
腎臓に血が行きにくくなります。すると、腎臓全体の細胞が悪くなり、
たんぱく尿の有無に関係なく、腎臓が悪くなっていきます。
これが最近よく言われはじめた、“新しい”糖尿病性腎臓病です。
■糖尿病性腎臓病の治療
糖尿病性腎臓病の治療では、糖尿病の改善と併せて、
腎臓に負担をかけている原因を取り除くことが重要です。
糖尿病だけの場合は、まず血糖のコントロールを良くする治療を行います。
糖尿病と併せて、たんぱく尿がある場合は、
たんぱく尿を減らす効果が期待できる糖尿病の薬を使います。
このような治療は、糖尿病性腎臓病の進行を緩やかにするだけではなく、
糖尿病の合併症として多い、心筋梗塞や脳卒中の予防にも有効です。
■まとめ
腎臓は再生する能力に乏しいので、一度悪くなったらそれより悪くならないように
少しでも早く見つけて治療をすることが大事です。