腎移植
2024年08月31日
[過去の放送内容]
今回、腎移植についてお話を伺ったのは、
聖マリア病院 病院長の
谷口 雅彦 (たにぐち まさひこ) 先生です。
■腎臓と腎移植について
腎臓は、体の老廃物や余分な水分を尿として出す働きをしていますが、
その働きが弱くなった状態を腎不全と言います。
さらに、腎臓の働きが30%以下になった状態を末期腎不全と言います。
末期腎不全になると、全身倦怠感やむくみが起こります。
そのままでは生き永らえることが困難になってくるので、
腎代替療法として血液透析か腹膜透析、
もしくは腎移植を選択することになります。
■透析について
腎代替療法のなかで一般的なのは透析です。
血液中の老廃物や余分な水分を、腎臓に代わって人工的に取り除きます。
しかし透析は患者さんの負担が大きく、血液透析は週3回の通院が必要、
腹膜透析は自宅で出来る一方で、時間と手間がかかります。
■腎移植について
腎移植とは、悪くなった腎臓の代わりに新しい腎臓を体の中に入れる方法です。
腎移植は、透析のように時間や手間がかからないというメリットがあります。
また、水分摂取や食事面の制限もなくなるので、
日常生活がとても楽になったという声をよく聞きます。
■末期腎不全の原因
腎移植の対象となる末期腎不全の原因は、
高血圧や慢性腎疾患などさまざまですが、
最も多いのは糖尿病腎症です。
■腎移植の対象
腎移植の対象となる病気として、慢性糸球体腎炎が挙げられます。
糸球体は腎臓の中にあり、血液をろ過する役割を果たしていますが、
慢性糸球体腎炎では、本来、ウイルスなどの病原体を攻撃する抗体が
何らかの原因で糸球体を傷つけてしまいます。
また腎移植は、生まれつき腎臓が上手く働かない子どもや、
原因不明の末期腎不全になった若い人にも行うことがあります。
■腎移植の注意点
腎移植を受ける時から免疫抑制剤を飲むので、
多くの場合、移植後に拒絶反応が起こることはありません。
ただ移植して数カ月以内に、
発熱や尿量の減少などの軽い拒絶反応を起こすことがあるので、
1年間は拒絶反応には注意が必要です。
腎臓を提供した人についてですが、
腎臓が1つになっても日常生活に問題はないと思います。
ただ1つになることで高血圧や糖尿病、
高脂血症などの生活習慣病になるリスクが若干上がるとされています。
■腎移植の方法
腎移植の方法は2つあります。
家族や親族から腎臓を提供してもらう生体腎移植。
亡くなった人から腎臓を提供してもらう献腎 (けんじん) 移植です。
年間に生体腎移植がおよそ2,000件、献腎移植は100~150件で、
9割は生体腎移植に頼らざるを得ないのが現状です。
生体腎移植では健康な提供者にも手術を受けてもらわないといけないので、
我々としては献腎移植を推進したいと考えています。
■まとめ
臓器提供の意思表示は、健康保険証や運転免許証、
マイナンバーカードやインターネットなどから登録できます。
また、登録後は家族にその意思を伝えておきましょう。
腎移植を待つ患者さんの中には、
生まれながら腎臓が上手く働かない小さなお子さんもいます。
そのような子どものためにも、
臓器提供をしていただく方が増えることを願っています。