受け継がれる川筋気質のDNA
2020年03月28日
[福岡県]
火野葦平と玉井家(4)
昨年、サッカーJ3で見事優勝を果たし、4年ぶりのJ2昇格を決めたギラヴァンツ北九州。前年の最下位からチーム再生へ手腕を発揮したのが、玉井行人社長でした。
実は玉井社長は、若松出身の芥川賞作家・火野葦平の甥にあたります。
2年前、社長に就任する時、J3に降格していたチームの社長を引き受ける人はいませんでした。社長就任会見で玉井社長は次のように述べています。
「困っている人がいたら必ず手を差し伸べるべきだと。これは私の血となって流れているDNA」
そして玉井社長の従兄弟にあたるのが去年、アフガニスタンで凶弾に倒れた医師、中村哲です。
干ばつに苦しむ中東の人たちのために自ら用水路を引き、60万人の難民を救った中村さん。現地の宿舎には、玉井家の精神を築いた祖父・金五郎の写真が飾られていました。
そして2人の伯父にあたる火野葦平は、両親をモデルに描いた「花と龍」のあとがきに、こう記しています。
「父の生きかたと『正しい者は最後に勝つ』という口癖とは、私の精神の上にたしかに或る投影をした」
遠賀川流域、そして港町若松で育まれた川筋気質の精神は、今も確かに息づいています。