シイタケで山を守る!“お遍路の宿”の思い~ふるさとWish篠栗町~
2019年04月24日
[ふるさとのチカラ]
福岡県・篠栗町は、博多駅まで電車一本で行けるベッドタウン。人口は減少していませんが、一方で、自然を管理する人たちが減っていることが今悩みの種になっています。
福岡市中心部から車で30分。平野部から山間部に入っていくと、旅館が姿を現しました。創業およそ100年の「山王屋旅館」です。
この日は、イタリア人のロビーさんとタイ人の妻、ジェーンさんが泊まっていました。インターネットで見つけたそうです。
夫婦が宿泊でもっとも楽しみにしているのが「そば」。山王屋名物のそばは全て手作りです。そして、そばの味を引き立てるだしの秘訣は「シイタケ」です。
岡部さんは篠栗の山の中でシイタケを栽培しています。「元々篠栗はシイタケ栽培が盛んだった。篠栗のシイタケが一番おいしいですよ!」
「これがシイタケの菌なんですよ。原木のいろいろな所からシイタケが出てきます」
しかし、2013年に町のシイタケ生産者部会は解散してしまいました。そこには篠栗町の深刻な状況があったのです。
八十八ヵ所霊場で有名な篠栗町。180年余り前、篠栗の人々は疫病と飢餓に苦しんでいました。それを祈祷で救ったのが、四国八十八ヵ所帰りの尼僧でした。その後、村の人たちは四国霊場を巡り、持ち帰った砂を村内八十八ヵ所に祀りました。それが篠栗のお遍路の起源とされています。
岡部さんの家族は、第九番札所の「守堂者」。多くの人出で賑わいましたが、時代の流れでお遍路さんは少なくなり、40以上あった旅館は14にまで減りました。高齢化に伴い町の4分の3を占める山林を管理する人も減っていきます。シイタケ生産者部会の解散も高齢化が原因の一つです。
岡部さんには気がかりなことがありました。2009年、篠栗町に大雨が降り、崖崩れが発生して母と娘2人が犠牲となったのです。山林は木を切らずに放置すると、密集して日が当たらなくなり根が浅くなります。このような状況で大雨が降ると、地滑り的な土砂崩れが起こりやすくなると指摘されています。
そこで岡部さんは2年前、仲間と7人でシイタケの自主組合を結成しました。クヌギの木を伐採して、シイタケの原木として利用しています。
お客さんの夕食は、妻と母の3人で準備します。シイタケは天ぷらにも。山で採ってきたタラの芽も美味しそうですね。
お遍路さんが少なくなった篠栗町。町をどう輝かせるかを見つめなおしたとき、大切なのは周りにある自然と向き合うことだと岡部さんは気づいたのです。
「シイタケやタケノコなど、昔ながらのものを継続しながら自然を大事に活用していきたいと思います」。
※この記事は2019年の情報です{「シリタカ!」4月24日放送)。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。