「魂の一刀」(佐賀県鹿島市)
2024年12月15日
鬼の面をかぶり、笛や太鼓のリズムに乗って踊る佐賀県南西部に伝わる伝統芸能「面浮立」。
その鬼面である「浮立面」を作っているのは、佐賀県鹿島市に工房を構える中原恵峰さん。
この道70年、ノミや彫刻刀を握り続け、いまや曲がってしまったその指は勲章だという。
中原さんが手がける漆を塗らない「白木仕上げ」は、木目を面の中央に合わせ、左右対称の美しさを生み出すのが特徴だ。
そのため、材料となるクスノキの仕入れも、年輪を見て色合いや目詰まりが良いもの選び、丸太の状態で3年、製材して2〜3年の乾燥期間を経て初めて作業に入るというこだわりだ。
面を彫るうえで、最も神経を使う部分は目のまわりだという中原さん。
人間の感情を最も顕著にあらわすのが目であり、「目は口ほどに物を言う」という言葉もあるほどだ。
目尻のラインひとつで、柔らかくて優しい感じにもなれば、鋭く怒った表情にもなる。
何度も面と向かい合いながら、ミリ単位の調整をして命を吹き込む。
そんな中原さんが未来に残したい場所は「祐徳稲荷神社」。
日本三大稲荷のひとつに数えられる神社だ。
自然の緑をバックに赤が映える華やかな社殿、四季折々の植物など、
見る者の表情をパッと明るくするその景色は、中原さんの心の支えになっているそうだ。