土の技（福岡県那珂川市）
2022年04月10日
2021年、卓越した技術者の代名詞である「現代の名工」に選ばれた左官職人の荒木富士男さん。
その高い技術力で、一般住宅のみならず、八幡製鉄所旧本事務所、筥崎宮本殿、宇佐神宮本殿など、多くの国宝や重要文化財の修復に携わり、左官業界では名高い職人だ。
そんな、様々な左官の技術の中で、荒木さんが最も得意とするのは、「人造石洗い出し仕上げ」という、古くからある左官工法の一つ。
セメントが硬化する前に表面のセメント分を洗い出し、中の骨材を表した仕上げ技法である。
その高い技術で、業界人からは「人造さん」という異名がつけられるほどだという。
壁肌の色具合や質感をどういう技法で仕上げるかをしっかりと思い描き、こて波を消すということは当然であり、真っ直ぐなものは真っ直ぐ…
絶対に曲げないという意識で「こて」を持つ。
そんな荒木さんが未来に残したい風景は「五ケ山ダムの自然」。
那珂川市の山奥に広がる五ケ山ダムは佐賀県との境にもなっている。
山あいの空気と陽の光を浴びた水面。風と自然の音が、名高い職人としてのプレッシャーを解放し、心身をリフレッシュしてくれるという大切な場所。
左官の魅力は「後世に残せる仕事」だと語る荒木さんにとってこの景色も後世に残したいと願う。