「自然との商売」(福岡県福岡市)
2025年01月05日

福岡市東区箱崎の地で江戸時代に誕生した「箱崎おきゅうと」。
「おきゅうと」とは、原材料となる「エゴ草」を煮詰めて成形したもので、昭和中期までは箱崎地区の朝食の定番のおかずだった。
だが、地球温暖化などの影響で、今では原材料の「エゴ草」が福岡ではとれなくなり、おきゅうとを生産することが難しくなってきているという。

創業100年となる「林隆三商店」では、家族経営でおきゅうとを作っており現在は3代目となる。
今回取材した佐藤美木子さんは、3代目の姉であり、50年以上箱崎おきゅうとに関わってきた。
最盛期には、子どもたちが小学校に行く前に、町をまわって売り歩いていた時代もあったという。

おきゅうとを作る上で最も大切なのは、直火でエゴ草を溶かしていくことだという。
風味を生かすために直火にこだわっているのだが、火の調整を間違えてしまうと、鍋に焦げついてしまう。
湯せんをすればその失敗は起こらないそうなのだが、味が大きく変わるそうだ。
小さいころから食べてきた味を守り続けるために作り方は変えない。
佐藤さんは今後も「昔と全く変わらないおきゅうとを作りたい」と話してくれた。

そんな佐藤さんが未来に残したい風景は「箱崎の町並み」だ。
開発が進み、見慣れてきた景色が変わってしまうことをさびしく感じることもあるそうだが、好奇心を持って町を散策すると、新旧入り混じっている箱崎を、いとおしく感じるという。
今でも友人たちと町ブラを楽しむ佐藤さん。
その道はかつて、おきゅうと売りの子どもたちが通った道なのだろう。
