「五感を形に」(福岡県飯塚市)
2025年02月09日

父の趣味だった木工を幼いころから見てきた内野筑豊さん。
だんだんと形が出来上がっていく様は楽しくて、見ていて飽きることがなかった。
父が亡くなった後、残された道具を受け継いだことをきっかけに、木工の世界へと足を踏み入れ、気づけば53年。飯塚の山中に構える工房「杜の舟」で、今なお木と向き合っている。

「デザインのためのデザインにならないように」。
内野さんの作品にはすべてにストーリーがある。
その作品を作る意味を考え、時には空想を形にしたり、様々なシチュエーションを想像して作品に意味や思いを落とし込む。
その独特な表現は、見るものを魅了し独自の世界へと誘う。

長くこの仕事を続けることができた秘訣は、ヒット作を出さないことだと語る内野さん。
自分自身にプレッシャーをかけないことで、余裕が生まれ、質の良いものを作ることができる。
“楽しい”という思いをいつまでも大切にし、自由な発想は遊びの中で学ぶ。
たぶんそれは非効率なことなのだろう、だけどそれが面白いと内野さんは言う。

そんな内野さんが未来に残したい風景は「工房の前から見える山々」。
25年前に国道沿いから山の中へと工房を移したのはこの自然があったからこそ。

内野さんのあふれるインスピレーションは木工だけにとどまらず、童話を書いたり、絵を描いたり、この風景を題材にした作品も多い。
季節ごとに山の色が変わったり、夕日が沈む場所が変わったり、渡り鳥が通ったり…様々な表情を見せてくれるこの景色は、感性にささる、まさに自分の居場所だという。