【菓子職人❷】「8代目のためらい」 熊屋誠一郎さん
2026年08月23日

260年以上の歴史を誇る長崎県平戸市の老舗「牛蒡餅本舗 熊屋」。
8代目の熊屋誠一郎さんは、長男として家業を継ぐ当たり前の未来に疑問を持ち、自らの可能性を確かめるため、一度故郷を離れて東京のIT企業に就職する道を選びました。

熊屋が守り続ける「牛蒡餅」は、平戸で愛されてきた郷土菓子です。
米粉と砂糖を使ったシンプルな餅菓子で、200年以上前のレシピを元に、時代に合わせて少しずつ進化しています。
当然のことながら、江戸と令和では材料や環境など様々なことが違います。
ですが、「お客様に喜んでもらいたい」という創業以来の変わらぬ職人魂を、今もその味に込め続けています。

家業を継ぐ前に東京でサラリーマンとして過ごした3年間。
そこで得た幅広い知見は、誠一郎さんに大きな変化をもたらしました。
家業を単なる「町の和菓子屋さん」としてではなく、ひとつの「会社組織」として俯瞰し、将来を見据えた経営ができるようになったのです。
この新たな視点こそが、来年に控えた「熊屋のカステラ台湾進出」という大きな挑戦へとつながっています。

誠一郎さんが未来に残したい風景は、平戸市生月町の「塩俵の断崖」から見渡す鮮やかな紺碧の海です。
どこまでも広がる深い青は、外の世界との繋がりを予感させます。
かつて大航海時代にヨーロッパと日本を結ぶ国際港として栄えた平戸。
その歴史に思いを馳せながら、「今度は平戸から世界に発信したい」という決意を胸に、誠一郎さんはこの美しい景観を未来へと残そうとしています。