宝満川から布を織る？！現代の“織姫”が願う地域おこし～ふるさとWish小郡市～

2019年８月９日（金）にKBCで放送された情報番組「アサデス。KBC」のアイタカー中継では、福岡県小郡市にある「翔工房」を紹介しました。さまざまな布製品を作り上げているこの工房は、驚きのこだわりを持っているのです。

最初に石井裕二リポーターと服部さやかリポーターが紹介したのは、年季の入った機織り機。実は「翔工房」、昔ながらの機織り機を使う織物工房なのです。実際に織られたストールは、光の加減によってキラキラと光沢を放っています。単純に「手作りだから良い」ではなく、機織りで紡がれた作り手の思いや感覚、作品にかけた時の流れが、糸と糸の間に透けてみえるような「味わい」こそ、「翔工房」で仕立てられる作品の魅力です。

しかし「あるこだわり」とは、機織りのことではないのです。「え～！と驚く、初めての光景がありますよ！」と石井リポーターが工房内を進むと、主宰の田篭みつえさんが何やら、作業を行っています。

「あ～！」、「え？本物？」スタジオがざわついたその光景こそが、「翔工房」のこだわり。実は糸を紡いで布を織るまでの全工程を手作業で行っているのです。
「誰でもできますよ」と、くるくると糸車を操る田篭さん。その手元では鮮やかな朱色の羊毛が細く、細く、糸へと紡がれています。一見、簡単そうに見える作業ですが、力加減によっては糸が途中で切れてしまったり、太さにばらつきが出たり、熟練した感覚が必要な大変な工程です。

「翔工房」では、機織り教室も行っているということで、早速、服部リポーターがたて糸とよこ糸の交錯でできる平織り作業を体験させてもらいました。
「機織り」を思い浮かべたとき、最初に浮かんでくるのが、たて糸とよこ糸が一本ずつ交互に交錯する平織りでしょう。実際、服部リポーターも、横で田篭さんに教えてもらいながら、「と～ん、とん！」と1段織り上げました。

しかし、「手が震える！」と服部リポーター。実は「平織りにはじまり、平織りに終わる」という言葉があるほど、細い糸を一定の風合いで織り上げていくには、熟練が必要。織った部分を見て「心の余裕が現れている…」とつぶやく服部リポーター。どうやらガタガタだったようです。簡単そうに見えるのに、奥が深い！

思いを紡ぎ、伝えていきたい

さまざまな作品を仕立てている田篭さんですが、今、もっとも力を注いでいるのが、「宝満川から布を織る」という活動。「え？どういうこと？」と戸惑うスタジオをよそに、田篭さんが取り出したのは、何かの植物。「これは苧麻（チョマ）という植物で、小郡市を流れる宝満川の土手に地生する多年草なんです」と石井リポーターが紹介します。苧麻の茎からは上質な糸になる繊維が採取でき、田篭さんはそれを使ってある作品を作ることで、小郡の町おこしを行っているというのです。

その作品とは、首から下げる「おちょこ入れ」。実は小郡市は宝満川の水、肥沃な土壌のおかげで、おいしいお酒もできるとあって、秋に開催されるイベントで配布し、街歩きしながらお酒やグルメを楽しんでもらおうという試みを行っているのです。

「今は機械が安く、大量に布を作れる時代です。そんな時代だからこそ、昔の手間、思いを紡ぎ、物を大切にする心を伝えていきたいと思っています」そう語る田篭さん。鮮やかな藍色のおちょこ入れで酒に酔い、小郡の良さに触れてほしいと願っているそう。

小郡は七夕伝説発祥の地ともいわれ、媛社神（ひめこそかみ）と織姫神（おりひめかみ）を祀る「媛社神社」があり、地元では、「七夕さん」や「七夕神社」と呼ばれ、親しまれています。そんな小郡に工房を構える田篭さんは「現代版織姫」。一糸、一糸に手に取る人の幸せを願いながらさまざまな作品を生み出しています。

「翔工房」の作品たちを手に取ると、願いが叶いそうな心強さを感じるのは、作り手の伝統や歴史への敬意と信念、郷土愛が込められているからかもしれません。叶えたい願いがあるなら一度、小郡を訪れてみてはいかがでしょうか。


■翔工房
福岡県小郡市山隈113-2
TEL：0942-72-8890
営業時間：10：00～16：00
定休日：不定
教室は火曜・水曜・土曜・第2・４日曜、見学は要予約

※この記事は2019年の情報です。変更している可能性があります。事前にご確認ください。