居心地よすぎ!! 笑い声響く常識破りの図書館　福岡県福智町

かつては炭坑の町として知られた福智町は、今でも緑深い森を保ち、400年以上の伝統を誇る上野焼など、豊かな自然と文化を今なお、残しています。そんな町が、「この土地で培われてきた文化を引き継ぎながらも、新たな出会いが生まれる場を」と、それまで町になかった図書館を誕生させました。
ところがその図書館が「図書館のイメージを一蹴している」と話題になっているそう。今回は九州朝日放送の朝の情報番組「アサデス。KBC」で2019年1月15日（火）に放送した「ふるさとWish　アサデス。旅行社」より、「常識破りの図書館」をご紹介します。

「本を読む人のための静かな場所」ではない、笑い声が響く図書館？！

リポーターのボビーが訪れたのは、2年前に開設した福智町立図書館・歴史資料館「ふくちのち」。館内に入ってまず、目に飛び込んできたのは、賑やかなにイベントを楽しむ人たちの姿。「今日は祝い鶴という折り紙を折るイベントをしているんです」と話す主催者の声も掻き消えそうなほど、参加者が互いに教え合い、笑い合う声が溢れています。
「図書館でこんなに声を出していいの？」と驚くボビー。確かに、「図書館」のイメージは、「本を読む人達のため、静かに過ごすのがルール」が常識。ところが、この「ふくちのち」は、そんなイメージを逆転の発想で完成させた施設。
「イベント開催やこどもの声もOK！」と賑やかな図書館として開放し、幅広い年齢層に親しまれるようにと積極的にさまざまなイベントを開催しているのです。

施設は、図書館や歴史資料館以外に、地元の食材が楽しめるカフェ「としょパン」や、文房具屋や本が購入できるキオスク、キッズスペースのほかに、キッチンスタジオや中高生のためのラウンジ、新たな仕事と出会えるジョブスポットなど、さまざまな機能を備えたスペースを併設。ここを訪れる誰にとっても「自分の居場所」を感じられる空間があり、目的がなくても立ち寄りたくなる魅力を備えています。
館内をめぐると、カフェでは小さなお子さんを連れたママさんたちが友人同士で集まり、楽しんでいます。「確かに、ちょっとうるさいなと感じることはあるけれど、子どもたちが図書館って楽しい！って思ってくれればいいじゃない！」と人生の大先輩たち。
「ふくちのち」は、時に聞こえてくる世知辛い子育て事情なんて微塵も感じない、さまざまな人々に寄り添う、「町のオアシス」になっているようです。

「ふくちのち」には、「図書館」を身近にする仕掛けが詰まっている！
もちろん、基本は図書館。「サイレントルーム」という静かに本を読むための部屋もあります。扉を開けた瞬間、「わ～！何、この空間！」と思わず声を上げたボビー！実はこの部屋、「町議」や「議長」などの役職札もそのまま残る旧町役場の町議場を、そのまま利用した一風変わった空間なのです！
一般の人がなかなか足を踏み入れられない異空間での読書は、なかなか体験できるものではありません。もちろん、ボビーは議長席にちゃっかり座っていました。

「ふくちのち」はほかにも、「本」に興味を持ってもらえるようなさまざまな“仕掛け”があります。例えば、書棚の並び方。手に取りやすい位置にマンガが並び、その奥に関連するジャンルの本を陳列しています。手塚治の「ブラックジャック」の奥には医療系の書籍が多数並んでいて、マンガを入り口に知識を深める“きっかけ”になっているのです。
また、読んだ本のページが加算される「読書通帳」なるものも！本物の通帳さながらの「読書カード」で、貯金が貯まるようにページ数が加算されるため、じっくり本を読むのが苦手な人も、気が付いたらたくさん本を読んでいた！なんてことも。

「ふくちのちという名前は、図書館で芽生えた知識からの「知」と、福智町に400年以上続く伝統工芸「上野焼」などを育んだ郷土という意味の「地」、それらを引き継ぎながら、新たな出会いが生まれる場所を目指して付けられました」と語るのは、井上憲治館長。だからこそ、従来の図書館ではなく、“これからの図書館を作っていきたい”という思いを込め、さまざまな取り組みを行っているのです。
それを実践するのが3Dプリンターやレーザーカッターを備えた「ものづくりラボ」。機材は町内外を問わず、事前講習を受講すればだれでも利用可能で、郷土の上野焼に伝わる“ものづくり精神”を伝えるイベントは、子どもから大人まで毎回、大盛況だといいます。

図書館のイメージをはるかに超えたこの場所は、人々に寄り添いながら、未来への可能性を追求して革新する町の在り方を体現しているよう。郷土に培った歴史や伝統を引き継ぎながら、新たな知識や情報を吸収した新たな活力は、町をより元気に、魅力的に盛り上げていくに違いありません。そんな福智町の新たな「パワースポット」へ、ぜひ一度立ち寄ってみて！

※この記事は2019年の情報です。変更している可能性があります。事前にご確認ください。