誤差わずか100分の1ミリ!世界が注目する鉄工所の職人技~ふるさとWish広川町~

日本が誇る「ものづくり」を支える職人技とは?!

福岡県南部に位置する広川町。いちごをはじめとした農作物の生産が盛んな、緑豊かな町です。また200年以上の伝統を誇り、国の重要無形文化財に指定されている「絣」をはじめ、さまざまな工芸品の生産地でもあります。そうした「手仕事」、「ものづくりの技術」が古くから受け継がれているこの町には、今でも日本ならではの温かみあふれる「ものづくり」を支える職人たちが活躍しています。

世界シェア50%!中島田鉄工所のスゴ技!

まるで砂金のような極小ネジは中島田鉄工所が作る機械で製造したもの 高い技術力に世界が注目

その代表格が「中島田鉄工所」。携帯電話から飛行機まで何にでも使われている「ネジ」…ではなく、「ネジを製造する機械」を作っている企業です。しかもその実態は、直径2.5ミリ以下のネジ製造機で国内シェア80%、世界シェアも50%!世界中の「ものづくり」を支えている、すごいプロ集団なのです。

きさげ作業によって見事な幾何学模様から輝きも!

1911年に久留米で創業、1988年に工場拡張に伴って広川町に移転した同鉄工所。「アメリカ、中国、韓国など、日本だけでなく世界各国に取引メーカーがあります」と中島田正宏社長が話すように、世界規模の活躍を見せています。それを支えるのは最先端設備と最新技術、そして広川町に古くから受け継がれている「手仕事」と似た、職人の匠の技「きさげ作業」です。

「きさげ」とは、機械を組み立てる前に部品の金属面に細かく傷をつける作業のこと。しかし、なぜわざわざ傷をつけるのでしょうか。

「きさげ」を施すのは部品同士が擦り合う部分。ここにわずかでも異状が生じると正しく作動しません。しかし、機械で断裁した金属部品には、0.1㎜以下ではありますが、ムラが生じてしまいます。そこで、可能な限り平行にするため、人の手によってムラを削り、精度と耐久性を高めるのが「きさげ」です。細かく、浅く傷がつくことで、潤滑油が行きわたり、機械の故障を防ぐメリットもあります。

「100分の1㎜の誤差で合わせます」と話すのは、きさげ歴30年の中原一幸さん。赤い塗料を目安に擦りあう面を極限まで均一にするため、手の感覚と目視のみで「きさげ」を行います。一流のきさげ職人になるまでには10年はかかるといわれるこの作業で、キャリア30年という中原さんは、まさに「匠」なのです。

世界が注目する中島田鉄工所の「ものづくり」とは?

熟練の技術だけでなく、ものづくりの楽しさを日々、先輩から吸収していく

しかし、人材不足が懸念される製造業において、中原さんのような技術者の育成は大きな課題です。同鉄工所では、組立部門のスタッフだけでなく、社員の多くが「きさげ」の技術を習得するという、独自の人材育成を実践しています。「新入社員は学歴・年齢を問わず、とにかく最初にきさげ作業を経験してもらいます。作業を通じて、その重要性を学び、スキルや腕を磨くこと以外にも、自分の作ったものがカタチを変えていろんな製品の中に組み込まれていく面白さ、楽しさを実感することで、仕事に対するやりがいや情熱を持てるようになります」と正宏社長。「世の中のためになるものを自分の手で作っているのだと、肌で感じることができるのが、きさげ」という社長の言葉通り、「初めての道具を使いこなす難しさはあるけれど、大事な作業を担っているんだと実感できます」と入社1年目の深町和喜さんは、今まさに仕事の魅力を感じているようです。

「厳しい経験もするし考えさせられることも多い、“つくる”というおもしろい工程を機械にやらせるのはもったいないでしょ」と笑う正宏社長。最先端設備の加工精度と、マニュアルにはない「匠の技」、そして「こだわり」が、世界が注目する中島田鉄工所の躍進を支えているのです。

日本が世界に誇る発想力、技術力、緻密さ、繊細さなど、すべては連綿たる「ものづくり魂」が育んだもの。それらを凝縮した中島田鉄工所の機械たちは、今日も世界のどこかで私たちの暮らしを支える“ねじ”を作っています。

中島田鉄工所
福岡県八女郡広川町大字日吉1164-4
0943-32-4331

※この記事は2019年の情報です(「シリタカ!」9月5日放送)。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。

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