
ボリューミーサンド!体が喜ぶスムージー!やさしいごはんがまちを育てる「mon’s cafe」の日々と夢(福岡・苅田町)【まち歩き】

■ 苅田町に灯る青い看板
西海岸ブルーの看板と、緑の壁が目印の「mon’s cafe(モンズカフェ)」は、通りがかっただけでは気づけないかもしれない。でも、その扉の向こうには、毎日“ただいま”が聞こえてくるような、あたたかな空気が流れている。
出迎えてくれるのは、店主・森山香緒里さん。元保育士の彼女が立ち上げたこのお店は、ただ食事を提供するだけの場所ではない。心をほっとほどく、地域の憩いの場だ。
■ 家族の反対も、迷いも、ぜんぶ包んで「やってみよう」
「正直、不安しかなかったです」
森山さんはそう笑う。体調を崩し、保育士を辞めたのが最初の転機。その後、母親の料理の手伝いを経て、企業の独身寮で若者向けの食事を作る仕事に就いた。「毎日『美味しかったです』って言ってくれるのがうれしくて。それが忘れられなかったんです」
地元に若者や子育て世代が気軽に集える場所を作りたい。そんな想いからお店の開業を決意するも、家族や親戚の多くは反対。「でも、高齢出産で子どもを授かっていたから、やるなら今しかないと思ったんです」。勇気を出して一歩踏み出したその姿勢に、背中を押された人は少なくない。

■ 飲むたびに、体が喜ぶスムージー
店内のスムージーメニューは、感覚や勘ではなく、何度も何度も材料の配合や温度、舌触りを変えながら試作を重ねてたどり着いたもの。特に人気の「デトックススムージー」は、MCTオイルに青汁、バナナ、小松菜、レモンを使い、砂糖に頼らず、果物本来の甘みだけで整えられている。
数えていたらきりがないほど、何度も何度もブレンダーを回し続けた日々があった。「もっと爽やかに」「もう少し飲みやすく」「色味が濁らないように」—ひとつひとつを丁寧に検証し、納得いくまで。
一口飲めば、体の内側がすっと整っていくような感覚。見た目の美しさもさることながら、口に広がるやさしい甘みとほのかな青菜の香りが心に残る。「青臭くならないように、でもちゃんとグリーンを感じてほしくて」と語る森山さんの目は、料理人というより、まるで研究者のように真剣だった。開発の過程そのものが、ひとつの物語になっている。

■ サンドイッチもお弁当も、ぬくもりが詰まっている
カウンターには、BLT、照り焼き、えびカツ、たまご…バリエーション豊かなサンドイッチがずらりと並ぶ。どれも手作りで、しっかりとボリュームがありながら、丁寧さが伝わる。
そして、お弁当。特重弁当からワンコインのお弁当まで、価格帯も幅広く、地域の人がふらっと立ち寄って手に取れる気軽さが魅力。企業や学校からの注文にも対応しているそうだ。
取材中も次々とお客さんが訪れ、「今日もある?」と話しかける声が店内に響いていた。その一つひとつに、森山さんが笑顔で応える姿に、まるで町のお母さんのようなあたたかさを感じた。

■ 心も満たすランチタイム
mon’s cafeのランチタイムは、午後の元気をチャージする大切なひととき。日替わりのおかずに加えて、定番人気のメニューも豊富に揃っている。
この日いただいたのは、看板メニューのひとつ「鶏ハラミの炭火焼」。香ばしく焼き上げられた鶏ハラミは驚くほど柔らかく、噛むたびに炭火の風味がじんわりと広がる。添えられた玉ねぎは甘く、とろけるような食感で、おかずの味をさらに引き立ててくれる。
サラダにスープ、小鉢にごはんと続き、さらにもう一品プラスすることもできる。たとえばこの日は「鯖の味噌煮」を追加。濃厚な味噌だれが、ご飯を一層進ませる。「おかわりいかがですか?」のひと言に甘えて、ご飯を大盛りでおかわり。ボリュームは文句なしだが、不思議と重くない。食後には、カフェ顔負けの大きなアイスコーヒーが。「このサイズで?」と思わず笑みがこぼれる。
「足りないって言われるのが一番いやなんです」と森山さんは照れくさそうに笑う。その一言に、訪れた人のお腹だけでなく、心までも満たしたいという想いが滲んでいた。ランチが終わるころには、心の奥にそっと火がともるような、そんな満足感が残った。

■ 子どもと、地域と、生きるように育つお店
「いつか、子ども食堂をやりたいんです」
保育士時代の経験を生かし、託児所や紙芝居の読み聞かせなど、子どもたちと関われる場所づくりを目指しているという。
すでにお店には、学校帰りの子どもたちが宿題を持って立ち寄る光景もある。ギラヴァンツ北九州のサポーターや選手も通い、ファンとの交流の場にもなっている。「“またね”って言ってもらえるのが、一番うれしいんです」。そう語る森山さんの言葉には、地域とともに歩む覚悟と誇りが込められていた。
■ “ごちそうさま”の先に残るもの
mon’s cafeは、ただのカフェでも、ただの食堂でもない。ここには、食べることで心まであたたまる、そんな時間がある。
スムージーを飲めば、身体がすっと軽くなる。サンドイッチをかじれば、ふわっと笑顔がこぼれる。お弁当を持って帰れば、テーブルの上がいつもよりちょっと明るくなる。
この場所で交わされる「いただきます」と「ごちそうさま」は、日々の暮らしに小さな灯りをともしてくれる。
なんでもない日にこそ訪れてみてください。きっと、明日が少しやさしく感じられるはずです。
◼️『mon’s cafe(モンズカフェ)』
住所:福岡県京都郡苅田町京町1-18−14 エイトビル 102号
電話:090-2858-6854
営業時間:11:00~18:00頃(売り切れ次第終了)
定休日:月曜日、ギラヴァンツ北九州ホームゲーム試合日等など
駐車場:あり
【お弁当メニュー(一部)】
・カルビコロッケ:500円 ・生姜焼き:700円
・デラックス弁当(おかず2種類):800円 ・腹パン弁当(おかず4種類):1200円
【スムージーメニュー(一部)】
・濃厚バナナスムージー:600円 ・黒ごまきなこスムージー:700円
・マンゴースムージー:700円 ・デトックススムージー:700円
【ランチメニュー(一部)】
価格:1200円(コーヒー付き)
・日替わり:毎日変更
・定番:鶏ハラミ炭火焼 チキンステーキ 海老フライ カルビコロッケ など
+200円〜 おかずを1品追加可能
※2025年6月取材時の価格。表記金額は全て税込です。
Instagram @mons_cafe2022
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