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富田薫の日曜日もダイジョブよ!

これは単純なSFアクションではない! 映画『レミニセンス』

2021年09月15日

[富田薫の日曜日もダイジョブよ!]

この作品のさらに詳しい情報はこちらまで→https://wwws.warnerbros.co.jp/reminiscence-movie/nolan.html

© 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 「読書の秋」があるならば「映画の秋」という言葉があっていいはずだが、とんと聞いたことはない。なぜだろう?

 「読書=知的で文化度が高いもの」であって「映画=娯楽」…ってことかもしれないが、映画にも「知的な秀作」は数多くある。これもまさにその一本だ。

事前に撮影した“他人の記憶の中の映像”を実際に撮影現場で投影したというから恐れ入る。

 タイトルの『レミニセンス』の直訳は「回想、追憶、思い出」だが、本作では「人間の記憶の中に潜入すること」とされている。

 主人公は退役軍人で、他人の記憶に潜入かつそれを白日のもとにさらして事件を捜査する“記憶潜入エージェント”という設定。となると、捜査中に襲ってくる数々の危機をかいくぐり、悪人をバッタバッタとやっつけるSFアクションと思うのが普通だ。なんたって“ウルヴァリン”でおなじみのヒュー・ジャックマンが演じるのだから…。

 しかし、実際はまったく違う展開。過去の記憶や思い出、ひいては人間の生き方について深く考えさせられる知的な作品になっている。

無残な姿のマイアミは、CGだけではなく、実物大に作った街並みを水没させて撮影が行われ…。

 彼にとって“記憶潜入エージェント”はあくまで副業。本業は、中小企業の体裁をとった研究室で、依頼人の頭部に機械端子を装着し、ご本人が過去の幸せな記憶に浸る時間を提供しているのだ。顧客であっても顔見知りからは対価をとらないので、ビジネスマンとしてはお人よしだとわかる。

 そして、まわりには多くの同業者が存在し、過当競争だと示唆される。そんな「思い出ビジネス」が繁盛する理由のひとつが環境破壊だ。

 冒頭、生活が困難なほどに水没したアメリカ・マイアミの街並みが現れ、明るい未来を思い描くことができない荒涼とした大都会が広がる。

 そのビジュアルは、思うような生活がままならない今の日本の社会情勢に重なり「そういえば、自分たちの周りだって危ういことが…」と、そこで暮らす人々の不安に思いをはせることになる。

ダンディ・ニュートン(左)演じる“相棒”が、最後の最後に重要なメッセージを発することに…。

 そこに、満を持してレベッカ・ファーガソンが登場するが、どう考えても怪しい雰囲気。関わらないのが身のためだとヒュー・ジャックマンに忠告したかったが時すでに遅し。彼女がカメラ目線で放つ“妖しさ全開のオーラ”にあっさりと飲み込まれてしまった。

 ここから観客は物語を“俯瞰して”見るようになる…と言うよりも、その後の二人はどうなったのかをあたかも“のぞき見”することになるのだ。

 他人の記憶に潜入した情景は、研究室などの空間に投影される。それはまさに“3Dホログラム”だが、過去の体験や記憶と現実との間を行き来するので、記憶の中のシーンもキチンと計算して事前に撮影され、現実世界からその中に飛び込んでいくという演出が秀逸だった。

『インセプション(2010)』や昨年公開された『TENET テネット』が肌に合った方にはズバリおススメの作品。

 後半、物語はレベッカ・ファーガソンを軸にした“謎解きミステリー”へと表情を変える。最近の彼女は『ミッション:インポッシブル(2015年の『ローグ・ネイション』以降連続で4作!)』『ドクター・スリープ(2019)』『DUNE/デューン 砂の惑星(10月公開予定)』と立て続けに大作への起用が続いているが、確かに文句なしの演技だった。

 こう書いていくと、やはり“記憶”を扱ったクリストファー・ノーラン監督作品『メメント(2000年)』を思い出す方もいるだろう。それもそのはず、あの作品のベースは、弟のジョナサン・ノーランが書いた短編で、本作ではプロデューサーに名を連ねた彼の配偶者のリサ・ジョイが監督とくれば、まさに“ノーラン・ファミリー”の作風を強く感じることができる。

 「過去の記憶にすがることは、時として麻薬以上に危険」という大胆なメッセージは、いつも「昔はよかったな~」と思っている自分の心にグサリと刺さり、まさに「映画の秋」を満喫したのだった。

 ※この作品は、9月17日(金)からT・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、ユナイテッド・シネマ福岡ももち、ほかで全国ロードショー。

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