クリント・イーストウッドの〝現役ぶり〟に舌を巻く! 映画『クライ・マッチョ』
2022年01月13日
[薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!]
この作品の詳しい情報はこちらまで→https://wwws.warnerbros.co.jp/crymacho-movie/
いまだに信じられないのが、主演のクリント・イーストウッドは91歳だということだ。
しかも本作の監督・製作も務めているので、メーキングでは、マスクで完全防備の現場スタッフに細かい指示を出す姿も見て取れる。
テンガロン・ハットを被って馬にまたがるシーンは、まさに〝凛々(りり)しい〟のひと言だが、世間的には〝楽隠居〟と言える年齢にもかかわらずチャレンジするその姿は〝映画に人生を賭ける男〟そのものだった。
1971年の『恐怖のメロディ』から数えてちょうど40作目。彼の監督デビュー50周年記念を飾るのが、この『クライ・マッチョ』だ。
『許されざる者(1992)』と『ミリオンダラー・ベイビー(2004)』でアカデミー賞の作品賞と監督賞を受賞するなど、輝かしい実績を持つ彼が節目の作品として選んだだけあって、骨太な主張がスクリーンからあふれ出る。
ストーリーはこうだ。その昔、ロデオ界のスターで一世を風靡したものの、あることがきっかけで落ちぶれてしまった男…クリント・イーストウッド。そんな彼の元に、大きな〝借り〟のある人物から難しい依頼が舞い込む。
それは「息子はメキシコで母親と暮らしているが、それがひどい女で、虐待にあっている。アメリカ側のオレの方まで連れ戻せ!」というミッションだった。
つまり、その少年の親権をめぐって両親がトラブルになっているうえに、メキシコからアメリカへと国境を越えなければならない。人によっては、それが〝誘拐〟に見えてしまうややこしい話なのだ。
メキシコの母親の元を尋ねると、明らかに怪しい用心棒が登場。彼らを振り切って〝目的〟の少年と国境に向かうが、この子も一筋縄ではいかない奴だった。
〝逃避行〟が始まると、意外な展開や出会いが待ち受ける。冒頭の「虐待」といったキーワードに始まり、何気ないやりとりの中で発せられる「大人は噓をつく」といったセリフ。さらには人種差別や不法移民に治安を守るべき権力の腐敗…。
アメリカ社会が抱える数々の問題が本当のテーマであることが示唆される。
極めつけは、車のハンドルを握って主人公が放つこの言葉。「人は自分をマッチョに見せたがる。…すべての答えを知ってる気になるが、老いと共に無知な自分を知る。気づいた時は手遅れなんだ」と。
独り言のように語るクリント・イーストウッドの表情は「大丈夫か?わが祖国アメリカよ!」と言いたげだった。
しかし、ただ単に現代アメリカに落胆しているだけではない。終盤には、ひとりの人間として生きる上で大切なことは何か…と問いかけられ、自分の人生を振り返らざるを得なくなる。
そして、そこから「いくつになっても前に向かって進むことは大切だ…」というエールを感じるのだ。まもなく公開を迎えるが、年末年始の喧騒が過ぎ去ったところで鑑賞するにふさわしい、心に染み入る作品だった。
※1月14日(金)からT・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、ユナイテッド・シネマ福岡ももち他で全国ロードショー公開