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薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!

いつものマーベル作品と思ったら大間違い!『マーベルズ』

2023年11月14日

[薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!]

この作品のさらに詳しい情報はこちら→https://marvel.disney.co.jp/movie/marvels

© 2023 MARVEL

 映画館でシートに座った自分の中には“ザワザワする感覚”があった。それは本作のニア・ダコスタ監督の“作風”からくるもので“一抹の不安”とも言えるレベルだった。

 彼女の監督作品に2021年公開の『キャンディマン』がある。「鏡に向かって5回その名を唱えると、殺人鬼が現れて…」というあのホラー作品。

 これが身の毛もよだつ怖さに加え、実際のテーマは人種差別という代物。その監督がスーパーマンにも匹敵するパワーの持ち主キャプテン・マーベルを描くと聞いた時には強い違和感があった。テイストがまったく違うからだ。

 ところが、配給会社のディズニーから招待を受けたスクリーンで展開されるのはシュールで、時には“不条理”な世界。日本のSF文芸作品で言うと『時をかける少女』の筒井康隆氏の名前があがる。

 主人公キャプテン・マーベル役のブリー・ラーソンが「この映画はいままで誰も見たことのないマーベル映画になる」とコメントしたが、まさにその通り。マーベルの行く末を占う1本だ。

宇宙空間を舞台に活躍するスーパー・ヒーローなのに、ミズ・マーベルがお友達のように接してくるからキャプテン・マーベルも戸惑い気味で…。

 今回はストーリーよりも、その“舞台設定”を中心に紹介するが、いくつかの“ネタバレ情報”を含むのでご注意いただきたい。

 主人公キャプテン・マーベルに襲いかかる強敵ダー・ベンは、正義の味方の彼女をなぜか「破壊者」と呼び、執拗に攻撃を仕掛けてくるが、それにはもちろん理由がある。一方、マーベル側はチームを組んで立ち向かう。ここから『マーベルズ』とタイトルが複数形になったワケだ。

 そのチームは3人体制。母親がキャプテン・マーベルと親友であり、彼女を家族のように慕うモニカ・ランボーとキャプテン・マーベルの熱狂的なファンの高校生ミズ・マーベル。二人ともスーパー・パワーを身につけている。

 ところが、この3人は、ふとしたことがきっかけでお互いが存在する空間が瞬時に入れ替わってしまう。たとえば、地球上で敵と戦っていたのに、次の瞬間は宇宙空間のニック・フューリーを手助けする…といった展開。

イマン・ヴェラーニ が演じるミズ・マーベル(左)とテヨナ・パリス 演じるモニカ・ランボー(右)は、キャプテン・マーベルなみの活躍で…。

 さらに、主演ドラマ「梨泰院クラス」が世界的にヒットしたパク・ソジュンが演じるヤン王子の登場シーンは、観客を驚かせるのが目的のようだったし、ある動物が大挙して押し寄せるシーンのバックには有名なミュージカルの名曲が流れちゃうのだ。

 これまでのテイストとは明らかに違うが、そのシュールさが自分の趣味にマッチしたので、こういうのもアリだと感じた。今後のマーベル作品は「これまでになかった演出」がキーワードになるかもしれない。

ゾウイ・アシュトン演じるダー・ベンは、悪役ながら“被害者”のムードが漂い…。

 「これまでになかった演出」とは言っても、作品にはきちんとした主張がある。キャプテン・マーベルにあこがれるアベンジャーズ・オタクの高校生という設定のミズ・マーベルは、強敵ダー・ベンと対峙したことにより「スーパー・ヒーローにあこがれるだけの人生でいいのか?」と考えるようになる。

 その答えはエンディングで明かされ、本作が“人間の成長物語”だったことがわかる。アニメ映画のタイトルではないが「私たちはどう生きるか?」が描かれていた。

 ヒーロー映画でありながら、一見するとシュールで不条理な展開と思わせて、人間の生き方に言及するあたりが、アメリカの映画批評サイトRotten Tomatoes(オーディエンススコア)で86%の好評価を得た理由だろう。

やはりサミュエル・L.ジャクソンがこの姿で登場しないとマーベル映画は始まらないわけで…。

 冒頭で「マーベルの行く末を占う作品」と書いたが、エンディングのミズ・マーベルだけではなく、ほかの登場人物にまつわる今後の生き方も大きな宿題として残された。

 それが「新たなユニバース」につながるのか、さらに大胆なシュールさで物語が描かれるのか、まったく予想ができない終わり方だった。


 この作品は、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、T・ジョイ博多、TOHOシネマズららぽーと福岡、TOHOシネマズ天神・ソラリア館、ユナイテッド・シネマ福岡ももち、ほかで大ヒット上映中です。

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