スタッフがほくそ笑んでいる顔が目に浮かぶ予想外の展開!『エア・ロック 海底緊急避難所』
2024年08月20日
[薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!]
この作品のさらに詳しい情報はコチラ→https://gaga.ne.jp/airlock/
映像作品の用語に「ワンシチュエーション」というのがある。「ワン=ひとつ」+「シチュエーション=状況」なので、特定の状況の中だけで物語が進行する…と書けばピンとくると思うが、昨年公開されてヒットした『FALL(フォール/スコット・マン監督)』もその1本だ。
あれは「使われていないテレビ塔に登る映像を撮ってインプレッションを稼ごうとするユーチューバーとその友人が、地上600メートル地点で危機に陥り…」というお話で、90%以上がテレビ塔の頂上付近で展開する。
本作のプロデューサー(脚本も)のひとりアンディ・メイソンなる人物が手がけた過去作の中には、水深47メートルの海底に落下した檻から脱出しようとする姉妹に人喰いザメが襲いかかる『海底47m(2017年)』、水上バイクで沖に出た若者たちがやはり人喰いザメに襲われる『海上48hours 悪夢のバカンス(2022年)』なんてのがあった。いずれも「ワンシチュエーション作品」と言える。
今回も90%以上が航空機の客室内で展開する「ワンシチュエーション作品」で、そこにハリウッド最恐キャラのひとつ“人食いザメ”が登場する大サービスだ。
本作の構成上、ストーリーを冒頭から紹介していくとネタバレになってしまうので、その点は“概略”にさせていただきたい。
政治家の娘である主人公のエヴァは恋人たちとの卒業旅行だが、父親のおせっかいでボディーガードが同行。ローザという少女はじいちゃんばあちゃんと一緒にバカンス。CAなのに皮肉屋という設定のダニーロは客室乗務の仕事で…みんなメキシコのリゾート地に向かう航空機に乗り合わせる。
その機体がある理由でエンジントラブルをおこして急降下。いったんは海上に不時着したかに見えたが、それでメデタシメデタシではお話にならないから、さらに不幸なシチュエーションに陥る。生存者たちは、かろうじて空気が存在する機内の“エア・ロック”と呼ばれる場所に閉じ込められる。
原題は『No Way Up』なので直訳は「上にあがることができない」だが、具体的には「飛行機から脱出することは絶望的」となる。これでは邦題にならないから、そのワンシチュエーションからの発想で『エア・ロック 海底緊急避難所』となったわけだ。
途中から「ありえね~!!」とか「そんなはずないだろ!」といった展開が怒涛のように押し寄せる。“エア・ロック”の中の空気はいつまでもつのか。外から異常な音が聞こえるのは何故か?飛行機の機体は水圧に耐えられるのか?当然、救助隊もやってくるはずだが…。
そして真打登場とばかりに“人食いザメ”のお出ましだ。それとて「いつの間にそんなところにいたの?」という神出鬼没状態。
サメを追い払う方法も意外どころか奇想天外レベルで「気持ちがサメてしまうじゃないか!」とツッコもうかと思ったが、これがまんざらでもない生態なのだ。
たとえば、非常電源が生きていて“エア・ロック”の中はなんとか照明が確保されているが、周りは光の届かない海底なので「どうしてサメは獲物の人間のいる場所がわかるのか?」と思ったが、サメやエイなどは“ロレンチーニ器官”という特殊な感覚器官を持ち、生物が発する微弱な電流や磁場を感知できるので砂や泥に隠れた獲物を捕食することも可能だと知って驚いた。
ちなみに本作は、先月(7月12日~15日)開催された『第1回東京国際サメ映画祭』のオープニング作品として上映され「審査員賞」を受賞した。
サメ映画の祭典なんて「トンでもないイベントがあるんだな~」と思ったが、やはり「観客賞」を受賞したのが『温泉シャーク(井上森人監督)』で、観光客でにぎわう温泉からサメが登場する設定。
そこで上映された『えっ?サメ男(スウェーデン映画)』に至っては、チェーンソーを持った二足歩行のサメが主人公ってお話。
そのうち「下水道を泳いできたサメにおしりを咬まれる」なんてトイレが舞台の「ワンシチュエーションもの」ができるのでは…なんて妄想にとらわれたのだった。
※この作品は、8月16日(金)からユナイテッド・シネマ 福岡ももち ほかで全国ロードショー公開中です。