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薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!

順番が「サンライズ・サンセット」でないのが最後にわかる!     映画『サンセット・サンライズ』

2025年01月16日

[薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!]

この作品のさらに詳しい情報はコチラ→https://wwws.warnerbros.co.jp/sunsetsunrise/

©2024「サンセット・サンライズ」製作委員会

 ボキャブラリー不足で申し訳ないが「上手い脚本だ!」としか言えません。「宮藤官九郎脚本にハズレなし」を痛感する1本だった。

 設定はこうだ…舞台は東北地方・南三陸のとある町。多くの地方都市がそうであるように過疎化が進み住民は高齢者が多い。

 過疎に比例して発生するのが“空き家問題”。井上真央が演じる百香は町役場の職員で空き家対策の担当者。しかし、自分が所有する一戸建ての家屋もある理由で空き家になっていた。

 空き家対策の担当者が空き家の主ではシャレにならないので、適当な家賃を付けて空き家マッチングサイトに情報をアップする。

 それに反応したのが菅田将暉が演じる東京のサラリーマン・晋作。趣味は釣りでルアーを使って“座布団サイズ(70~80センチ)”のヒラメを狙う描写があり上級者だと示唆される。

 彼にとって南三陸のロケーションは“宝の山”、いや“海”だけど…。しかも、コロナ禍をきっかけに会社側もオンライン業務を推し進めたのでインターネットさえあれば地球上のどこでもお仕事が可能。

 早速”お試し移住”が始まり、大好きな釣り三昧の日々になるかと思いきや…ハイッお察しの通り、彼を“よそ者”と感じる地元の人々との間で悪戦苦闘の日々が始まるのだ。

空き家マッチングサイトに自分の物件を紹介した百香(右:井上真央)だが、何故かあまり乗り気ではない様子。

 中村雅俊が船主を演じる釣り船でのオープニングは『釣りバカ日誌』に出てくるような小芝居なので、コメディ路線かと思わせる。ただ、これは話が進むにつれて登場する重層的なテーマを際立たせるための作戦だったのだ。
 
 扱われるのは…
  ・空き家問題
  ・地方都市の過疎化
  ・災害被災地の問題点
  ・支援される側の苦悩
  ・支援する側の誤解
  ・新型コロナ・パニックの反省
  ・東京一極集中
  ・都市と地方の格差
  ・(短いけれど)嫁・姑問題
  ・効率化か義理人情か
  ・夫婦別姓

 そして、修復できないほどの喪失感を癒すことができるのか…にも言及がある。上映時間の2時間19分は、邦画としては短くないが「それでもこれだけのものを扱うと収拾がつかなくなるのでは…」という心配は一切ない。ミリ単位で計ったかのようにキチンと収まっているのだ。

南三陸で釣り船をあやつる章男(左:中村雅俊)の人生は波乱万丈だったようで…。

 さらに、主人公の百香をマドンナとして崇(あが)める男性俳優陣が、ズッコケを連発して場を和ませれば、ある動物が“ありえねー”行動に出て観客をけむに巻く。

 南三陸の素晴らしい“サンライズ・サンセット”の自然に加え、居酒屋や家庭料理に登場する食材の数々にも目を見張るが、それらを次々に口に運ぶ菅田将暉の食べっぷりは、いやらしさのない観光PRだ。

 原作は2022年に出版(講談社)された楡周平(にれ・しゅうへい)氏の同名小説だが、読む者の想像力で展開する文学作品の完成度に加え、シビアな社会問題を扱いながら笑いもとるという高いハードルをクリアした映像化と言えるだろう。

 主人公・晋作の絶妙なせりふ回しで迎えるエンディングは、南三陸の豊かな海の姿にある歌声がかぶる。そのシーンからは「どうですか?面白かったでしょう!」という“宮藤官九郎の勝利宣言”が聞こえてきたのだった。

マドンナの百香を“悪い虫”から守ろうとする男たちの行動はスベッてばかりで…。

 ※この作品は1月17日(金)から T・ジョイ博多、TOHOシネマズららぽーと福岡、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、ユナイテッド・シネマ福岡ももち ほかで全国ロードショー公開されます。

主人公二人の人間関係は最後の最後でアッと驚く展開を見せるのだ!

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