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KBC Sunday Music Hour(毎週日曜あさ9:00~ごご5:45)

薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!

主役の演技に入場料を払う価値あり!『エミリア・ペレス』

2025年03月27日

[薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!]

この作品のさらに詳しい情報はコチラ→https://gaga.ne.jp/emiliaperez/

© 2024 PAGE 114 WHY NOT PRODUCTIONS PATHÉ FILMS FRANCE 2 CINÉMA

 久しぶりに“ハードボイルド映画”を⾒た。あなたが⼤藪春彦や北⽅謙三といった⼈気作家のファンであれば、必ず満⾜できる⾻太の作品だ。
 
 幕があがると「エーッ︕ワオ︕マジ︕ウッソー︕」の連続。最後に「なんでそうなるの︕」という結末を迎える。

 予告編の打ち出しは「メキシコ最⼤の⿇薬カルテルのボスが性転換して⼥性になる」だったから、⾃分は、悪事がバレてピンチになり、警察の摘発を逃れるために性転換する。整形して⾝分証明書やパスポートを偽造したうえに性別まで変えて全く別⼈になる…なんてお話と思っていた。

 しかし、彼の⽬的はそれではなかった。「第97回アカデミー賞®」での12部門、13ノミネートのニュースなどもあって内容をわかったつもりでいたが大きな勘違い。その⽬的は現代社会でクローズアップされている“ある⾼尚な問題”だったのだ。

弁護士・リタを演じるゾーイ・サルダナのミュージカル・パフォーマンスは必見!

 冒頭、ゾーイ・サルダナが演じる有能な弁護⼠・リタが登場する。彼女は自分の待遇に大きな不満を感じていて「私の⼈⽣っていったい何なのヨ~!」という怒りをミュージカル仕⽴てで披露する。

 このシーンだけで物語に⼀気に引き込まれた。『アベンジャーズ』と『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』のガモーラや『アバター』のネイティリといったエイリアンの印象が強い女優さんだが、ボーカリストとしても完璧。アカデミー賞®助演女優賞受賞にも納得だ。これ以降の登場⼈物が重要な⼼情を語る場⾯でも同じようにミュージカル調の演出がある。

 ほどなくして⿇薬カルテルのボス・マニタスが登場。“その昔は男性だった⼈物”を演じたのはスペイン⼈俳優のカルラ・ソフィア・ガスコン。実際に男性として⽣まれたが、 2018年に性転換⼿術を受けたトランスジェンダー⼥性。

 だから「アカデミー賞主演⼥優賞にノミネートされた初のトランスジェンダーを公表している⼥優」と称され、秀逸な特殊メイクで“昔の彼”を演じている。

 リタの才能を⾒抜いたマニタスは、⾃らのブレイン&実⾏役として荒っぽい⼿法を使い計画に引きずり込む。彼女は期待に応えて理想のドクターを探し出し、晴れてマニタスは極悪⾮道の⿇薬カルテルのボスから“エミリア・ペレス”として⽣まれ変わり、それがそのままタイトルになる。

⿇薬カルテルのボス・マニタスの妻を演じるセレーナ・ゴメスからは“怪しい香り”が漂ってきて…。

 ただ、男性だった⾃分の存在を完全に消し去りたい彼女には別の問題があった。“昔の彼”にはセレーナ・ゴメスが演じるジェシーという妻をはじめとする“家族”があったのだ。

 「ある⽇突然、家族の一員が姿を消してしまう…」その理由を妻に説明し、納得させるのは⾄難のワザだが、ブレインとなったリタは巧妙な作戦で難局を乗り越える。とはいえ監督のジャック・オーディアールが脚本も担当しているので、この辺りの展開は映画のプロフェッショナルの技。

 ここまでのことが企画書に書いてあれば「そんな荒唐無稽な話を実写化してどうするんだ︕」なんて映画会社の偉い⼈に怒られそうだが、ここからが本作の真⾻頂。⼦供を愛する気持ちから家族愛、⼈間だれもが持つ嫉妬⼼に義理⼈情の話まで網羅される。

 そんなに詰め込んだらまとまりのない作品になるのでは…と危惧するが、まったく違和感はない。どころか、その脚本の完成度は10年に1本というレベル。

新しい人生を歩み始めたエミリア・ペレス(左)は“ある理由”で時の人になる。

 終盤に向かって登場⼈物の運命が浮き彫りになるにつれ、いささかショッキングな部分もある。ただ「⿇薬カルテルのボス・マニタスからエミリア・ペレスへと変⾝をとげる」という荒唐無稽な出来事が本当に起こったらどうなるか…を観客が映画館で実体験できるほど巧妙な仕上りだった。

※この作品は3月28日(金)から、ユナイテッド・シネマキャナルシティ13、KBCシネマ、kino cinema天神、シネプレックス小倉、イオンシネマ大野城ほかで全国ロードショー公開されます。

主要登場人物3人には予想だにしない運命が待っていて…。

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