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薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!

タイムリープ作品として完成度は高い! 映画『リライト』

2025年06月12日

[薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!]

この作品のさらに詳しい情報はコチラ→https://rewrite-movie.jp/

©2025『リライト』製作委員会

 いや~良くできている。打ち出し方によっては“令和7年の侍タイムスリッパー現象”になる可能性がある。もちろん、池袋シネマ・ロサの一館のみで封切られるわけではないが(笑)。

 ホラー作家・法条遥氏の同名タイトルの小説(ハヤカワ文庫)がベースの映画だが、原作を離れた絶妙な脚色=アレンジが施されている。

 テイストは星新一・小松左京・筒井康隆といった日本の三大SF作家の世界。テレビドラマで言えば、NHKが扱っている『藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ』あたりになるだろう。

美雪の前に“300年後の未来人・保彦”が突然現れ、二人の間に恋愛感情が芽生えるが…。

 物語の始まりは2019年。池田エライザが演じる主人公・美雪は東京在住の小説家。この日は、自分が高校まで暮らした広島県尾道の実家に里帰りして、ある人物が自分の部屋にやって来るのを待っている。会う約束はしていないのに、なぜ“これから起きること”がわかるのか?それは、10年前の高校3年の時に自らが体験していたことだからだ。

 続いて、高校3年の美雪が小説家を目指した理由が描かれる。

 ある日、阿達 慶が演じる保彦という人物が目の前に突然現れ「自分は300年後からタイムリープしてきた」と驚くべきことを言う。大風呂敷すぎるが、登場の仕方が尋常ではないので信用することにしよう。ただ、300年後の世界は平和ではなく、彼自身も幸せではないことが示唆される…これが本作の重要な要素だ。

“未来人・保彦”役の阿達 慶はもともと“宇宙人っぽいキャラ”なので違和感はなかった。

 保彦は転校生として美雪のクラスのみんなに紹介される。二人の間には恋愛感情が芽生え、夏の風物詩の中で一緒の時間を過ごす。

 彼は20日間ほど尾道で過ごしたあと、予想通り300年後の世界に戻ることになる。ここでまたもや「自分がこの時代にやってきたのは、美雪が10年後に世に出す“ある作品”がきっかけだった」と爆弾発言する。

 運命が許せば、また会えるかもしれないという期待を持たせて美雪と保彦の夏が終わる…。

 ここまで読んだあなたは「それなら人気のあるボーイズ&ガールズ・グループのメンバーを高校生役に起用すれば興行成績を稼げるじゃないか。彼ら、彼女らならば年齢的にも近いし…」と思うだろう。

 ところが、それは大きな間違い。そんなキャスティングをすれば“単なるジュブナイル作品”で終わっていたはずで、この作品のキモは登場人物の10年後の姿なのだ。主役の池田エライザは29歳、クラスメイト役も橋本 愛 (29歳)、久保田紗友(25歳)、倉 悠貴(25歳)、山谷花純(28歳)といった実力派が起用されている。

 “未来人・保彦”役のイケメン・アイドル阿達 慶は弱冠19歳(撮影当時17歳)で映画初出演だったが、素の“宇宙人っぽいキャラ”を生かしていた。

高校卒業から10年後の同窓会の場で、ある秘密が明かされて…。

 高校卒業から10年の時が流れて美雪のクラスの同窓会が開かれる。ここからが本作の本領発揮だ。

 美雪は、高校3年生のころの体験と10年が経過した現在の自分との間に“矛盾”を感じていた。10年ぶりの同窓会がきっかけとなり、その“矛盾”の謎を解くエピソードが続々と登場する。

 物語を追う楽しさはもちろん、登場人物のうちの誰かに感情移入できれば、観客も過去の自分が感じたことがよみがえってくるのがこの作品の特徴だ。

 たとえば…
 「将来の夢を色々と思い描いていたが、現実はまったく違う予想外の人生になった」
 「クラスメイトには仲の良い奴、そうでない人物もいたが今頃どうしているかな?」
 「自分より才能のある人物がいて、尊敬すると同時に嫉妬心も芽生えたよな~」
 「付き合っていた彼女の元カレが必要以上に気になっていたんだっけ」…という感じ。

 特に、出番は少ないが篠原 篤が演じる章介という人物が重要だ。彼がいるのといないのとでは作品の仕上がりに雲泥の差があるので、松居大悟・監督&上田 誠・脚本コンビによる“単なるタイムリープ作品には終わらせない”という作戦とも思えた。
 

橋本 愛が演じるクラスメイト・友恵も本作のキー・パーソン。何らかの秘密を知っているようで…。

 撮影はオール尾道ロケなので、大林宣彦監督の「尾道三部作」を思い出さずにはいられない。『転校生(1982年)』の主人公・尾美としのりや「新・尾道三部作」の『ふたり』のヒロイン・石田ひかりも登場するので、化学の先生役で原田知世(時をかける少女も原作は筒井康隆だ)が登場するかも…と思わせるほどのオマージュぶりだった。

 冒頭“令和7年の侍タイムスリッパー現象”などと書いたが、最後まで気になることがある。

 それは“あの3人目の武士はどうなるのか?”にも通じる“未来人・保彦の運命はどうなるのか?”ということだった。


※この作品は6月13日(金)から、T・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、TOHOシネマズららぽーと福岡、ユナイテッド・シネマ福岡ももち ほかで全国ロードショーとなります。

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